2025年 06月 22日
京都市の近代建築補遺 中京区編1
京都市中京区の近代建築その22

ここまで京都市中京区の近代建築を巡って来ましたが、紹介出来なかった建築が幾つか残りました。今回と次回に亘ってこれらを採り上げて行きます。
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四条大宮と嵐山を結ぶ京福電気鉄道嵐山本線の開通は明治43年。四条大宮駅と西院駅の間に設置された築堤には水路や道路を通す煉瓦開拱が複数存在します。これらは同線開通時に設けられたものと思われます。
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この開渠から程近く、四条通りに面して日本写真印刷の工場敷地が広がります。ここはかつて紡績会社の京都綿ネルが操業していた場所で、敷地内には京都綿ネル時代の建物が残されています。
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嵐山線の開渠近くの住宅街に建つ事務所建物。詳細は不明ですが、細密な軒飾りや庇の造作等大正期から昭和初期の建物の雰囲気を感じます。
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日本写真印刷工場北西の静かな住宅街に建つ現役の医院。こちらも詳細不明ですが、大正末期から昭和初期の築と思われます。
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山陰本線二条駅の北、丸太町通りから南へ入った一角に建つ幼稚園の園舎。日本聖公会 京都聖三一教会として昭和5年に建てられました。
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地下鉄丸太町駅の近くに建つ飲食店。正面側は改装されているようですが、側面には建築当初の下見板張りの壁面が確認できます。
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二条通りに南面して建つ二条薬業会館。昭和11年に建てられました。
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旧明倫小学校の向かいに建つ子供園の園舎。昭和12年に明倫幼稚園として建てられました。
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旧明倫幼稚園の南西、天神山町で現在中華料理店として使われている鉄筋コンクリート二階建ての建物。呉服商を営む富永商店の店舗兼事務所として昭和10年に建てられました。
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旧富永商店の近くに建つ現役の歯科医院。こちらも詳細は不明ですが、大正期から昭和戦前の築と思われます。
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旧明倫小学校の正門が面する室町通りを北に進んで程なく、蛸薬師通との交差点に建つ鉄筋三階建て建物。昭和3年に理容室兼住居として建てられました。
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# by sunshine-works | 2025-06-22 11:30 | 近代建築 京都府 | Trackback | Comments(0)
2025年 06月 15日
旧教業小学校
京都市中京区の近代建築その21

当ブログでは、中京区に現存する番組小学校を祖とする小学校の校舎として明倫小学校立誠小学校籠池小学校生祥小学校/銅駄小学校を紹介しましたが、中京区北部の二条城近くにも戦前に建てられた番組小学校の校舎が残っています。上京二三番組小学校として創立された旧教業小学校の敷地には昭和7年に建てられた校舎と講堂が現存しています。
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姉小路通りに南面して建つ鉄筋コンクリート造三階建ての旧校舎。壁面に大きな窓を廻らせ、一階部分は化粧タイル貼り。窓台や蛇腹で水平ラインを際立たせ、玄関上部の階段室には特徴的な三角形のガラス窓を張出します。
旧番組小学校に連なる小学校では、大正末期から昭和初期に各校区が競い合う様に意匠を凝らした校舎を建てて行きますが、この教業小学校の校舎も他に劣らぬ独創的な造りで、見た目の斬新さでは随一とも思えます。
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教業小学校は平成4年に周辺校と統合して廃校となります。現在敷地は地域の交流施設として使われてはいますが、この本校舎は特段の用途は無い模様で、空き家となっています。因みに京都市の公報によれば、活用法を公募中との事です。
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タイルを貼った玄関部。両側の大きな持ち送りが玄関庇を支えます。
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校舎東端を曲がって裏側へ進みます。
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校舎西端は後方に棟を伸ばしてL字型に連なります。
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校舎の北側、敷地の中程西寄りには講堂兼室内運動場が並びます。築年は不明ですが、相応に古い建物で、同時期に建てられたものと推測されます。
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# by sunshine-works | 2025-06-15 11:30 | 近代建築 京都府 | Trackback | Comments(0)
2025年 06月 08日
先斗町歌舞練場
京都市中京区の近代建築その20

三条大橋が渡る鴨川の西岸、河川敷に面して建つスクラッチタイル張りの大きな建物が目を惹きます。
先斗町歌舞練場は昭和2年に建てられました。
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歌舞練場は京都の各花街に設けられた演舞場兼稽古場で、京都を代表する花街となるこの先斗町には明治35年に最初の歌舞練場が建てられます。
現存するこの建物は初代歌舞練場を建代えた二代目となるもので、スクラッチタイルを貼った鉄筋コンクリート造4階建ての近代的な劇場建築として昭和2年に竣工します。設計は各地で著名な劇場を手掛けた大林組の技師木村得三郎が担当し、武田五一が監修に加わっています。
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南に寄棟屋根の建屋、北側に切妻屋根を葺いた建屋が繋がり、北側の棟は鴨川に向けて区画を張り出します。
スクラッチタイルを貼った壁面に縦長窓や丸窓を配し、要所を切石でアクセントを添え、屋根には緑色の和瓦を葺きます。
この建物は日本舞踊の演舞場としての用途を踏まえて和風要素が意匠に盛り込まれていますが、大きな丸窓を配し、寄棟や切妻の瓦屋根を葺いた東面の眺めはどこか帝冠様式の趣もあります。
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三条大橋を渡って河原の遊歩道から眺めます。
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丸窓に見えた三階の窓は正確には八角形の窓。北側の建屋の一階部分には小さな六角窓を並べます。

先斗町通りに面した西側の様子。建物は土手の段差の上に建てられており、こちら側からは二層の建物に見えます。
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小さな入り口は楽屋口でしょうか。
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建物北端の小さな窓。何の用途かは分かりません。
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なまこ壁風に仕上げられた壁面。
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建物南側に設けられた正面入口。二階部分に設置された鉄柵は一階壁面のなまこ壁と合わせた意匠となっています。
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南側の袖壁を飾る化粧タイル。当時の近代建築に広く用いられたこのタイルは、京都で造られた泰山タイルと呼ばれるものです。
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# by sunshine-works | 2025-06-08 11:30 | 近代建築 京都府 | Trackback | Comments(0)
2025年 06月 01日
京都市役所本庁舎3
京都市中京区の近代建築その19

京都市役所本庁舎の3回目、まずは西側階段を上って屋上の景色から。
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令和7年3月に完了した改修工事により、屋上は展望デッキ風に整備されました。特徴的な塔屋や外壁を真近に眺める事が出来ます。
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中央に建つ大きな塔屋。四方の面を飾る装飾は西洋やアジア、和風が入り交ざった意匠で、武田五一が得意とする表現手法です。
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この屋上へは東西それぞれの階段からの出入口が通じます。こちらが東側の出入口。
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西側がこちら。
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改修工事によって本庁舎に隣接して建てられていた西館と北館は取り壊され、新しい棟が建てられました。この新棟は本庁舎の西側と北側をL字型に囲み、本庁舎の壁面に沿って連絡通路が廻らされています。以下は通路から眺めた壁面の様子です。
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新築棟が囲む中庭に面した建物裏面の眺めです。
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こちらは1階部分の壁面。
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こちらは前回紹介した東側の階段窓から見える突き出した庇部分です。
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# by sunshine-works | 2025-06-01 12:06 | 近代建築 京都府 | Trackback | Comments(0)