2008年 10月 30日
神戸長田区の近代建築その2 区の中心街から国道2号線沿いを東方向へ進んで程なくすると左手にユニークな外観の建物が見えてきます。現在医院として使われているこの建物は昭和元年に公会堂として建てられました。設計:清水栄二。 神戸の中心部は開港を契機に都市化が進み市域も拡大して行きますが、のどかな農村地帯だったこの一帯も明治21年に山陽鉄道が開通すると次第に開発の手が加えられて行きます。線路と海に挟まれ、主要幹線である国道2号線が貫くこの一帯には沿岸に並ぶ工場から繫がる中小の関連工場や事業所が数多く建てられ、さらに商店や住宅が入り混ざった典型的な下町の町並みが形成されて行きます。長田区の前身の林田区は小さな区でしたが当時の神戸市の四分の一を占める人口を擁し、工業都市として発展を続ける活気のある区でした。 この公会堂が建てられた昭和元年当時、この辺りは拡大する神戸市街地の先端部でした。 それほど大きな建物ではありませんが、結構奥行きがあって見た目以上にボリュームがあります。内部は未確認ですが公会堂をどのように改装したのか興味深い建物です。 様々な作風がある清水栄二の作品の中でも東灘区の高嶋平介邸と共に先鋭的な意匠を取り入れた設計です。三角形に張り出した階段室の窓や楕円の屋根は5年後の高嶋平介邸にそのまま受け継がれています。 丸太を積み重ねたような軒蛇腹もこの建物の特徴です。この時代の流行りなのでしょうか。神戸中央区の岸本産業ビルにも良く似たデザインがありました。 大きな庇を持つ玄関を挟んで左右対称のデザインです。両端の階段室(と思われます)の頂部を異なったデザインにして敢えて対象性を崩しているように思えます。 近づいて良く見ると各部に傷みが目立ちます。現役で使用されている建物と思われますがそろそろ補修の時期のようです。 震災以降、勢いを失ってしまった感のある長田区ですが、神戸の中心部にもなかったこのモダンな公会堂からは当時の繁栄ぶりを窺う事が出来ます。
by sunshine-works
| 2008-10-30 23:45
| 近代建築 兵庫県
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