2025年 07月 13日
旧桂ヶ谷貯水池堰堤
山口県山口市の近代建築その2

山陽本線上郷駅から西へ進み、小さな集落裏手の丘陵を上って程なく、大正期に築かれたダムの堰堤が見えてきます。現在は水が抜かれ廃ダムとなっているこの場所は旧小郡町の近代水道発足時に貯水池として開かれました。
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山陽本線と山陽新幹線の新山口駅を中心とした山口市の南西部は、平成17年に山口市と合併するまでは小郡町の町域として栄えた場所です。この小郡は山陽道の宿場町として発展した町でしたが、明治33年に山陽本線が開通すると鉄道との結節点としてその重要度は高まり、町は更なる発展を遂げます。
時代が大正に代わって程なく、小郡駅(現在の新山口駅)を起点として宇部線と山口線が相次いで開業すると、小郡には県の鉄道の中心としての役割が加わり、経済成長に伴って多くの流入人口を得て市街地も急速に拡大して行きます。
このような背景の下で計画されたのが県内で二番目となる近代水道の設置で、大正9年に議会承認されると速やかに工事は進められ、大正12年に下郷地区への給水が開始されます。
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水道開設に際して水源としたのが上郷地区の北西部を流れる柱ヶ谷川で、取水口から導水された用水は水路を経てこの貯水池に蓄えられます。
堰堤の構造は礎石をコンクリートで固めた重力式ダムで、堰高13.4メートル、堰長さ23.6メートル、最大で37,200㎡を蓄えます。
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貯水池の底に設置されていた取水管や排水口が見て取れます。
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天端部の眺め。この堰堤はポンプの操作室や高欄、親柱に煉瓦が使われており、一般的な石造やコンクリート造に比べて手間と費用の掛かる仕様になっています。
人目につかないこのような施設に贅を尽くしたこの堰堤は、県下では下関市に次いで二番目となり、県都山口市や諸市に先駆けて町営で近代水道を開設した当時の小郡町の繁栄ぶりが伺えます。
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by sunshine-works | 2025-07-13 11:48 | 近代建築 山口県 | Trackback | Comments(0)


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