江畑溜池堰堤

山口県山口市の近代建築その１

山口市の南西部、宇部市との境に程近い丘陵地の一角に、昭和初期に設置された灌漑用ダムが残されています。現在も現用施設として使われているこの江畑溜池堰堤は、灌漑用ダムとしては最古のコンクリート造重力式堰堤として昭和5年に竣工しました。
温暖少雨の瀬戸内海地方は農業用水が得にくく、古くから各地に多くの溜池が設置されていました。この江畑溜池も元々は明治22年に土堰堤式の灌漑ダムとしてこの場所の近くに築かれましたが、翌年の豪雨により決壊し下流域に大きな被害をもたらしてしまいます。その後に再建計画が持ち上がるものの被害を受けた地域の反対により立ち消えとなります。その後長らく手が付けられなかったこの溜池再建ですが、昭和に入り計画が再度立案され、国庫補助を得て実現へ向かいます。昭和3年9月に起工、昭和5年12月に近代的なコンクリート重力式堰堤を備えた溜池が竣工します。
積み上げた礎石をコンクリートで固め、表面に切石を貼ります。堰高14.4ｍ、堰堤長68.8ｍ、貯水量は450,000㎥で、周辺30haに給水しています。
天端上には管理通路が通じており、反対側へ渡ることが出来ます。西詰めから東方向へ進んで行きます。

この時代の堰堤に多く見られる半円筒形の操作室が中央に据えられます。
下部に半円のアーチを空けた高欄。この意匠もこの時代の堰堤に良く見られます。
溜池側からの眺めです。
天端東詰めの親柱です。