2025年 06月 08日
先斗町歌舞練場
京都市中京区の近代建築その20

三条大橋が渡る鴨川の西岸、河川敷に面して建つスクラッチタイル張りの大きな建物が目を惹きます。
先斗町歌舞練場は昭和2年に建てられました。
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歌舞練場は京都の各花街に設けられた演舞場兼稽古場で、京都を代表する花街となるこの先斗町には明治35年に最初の歌舞練場が建てられます。
現存するこの建物は初代歌舞練場を建代えた二代目となるもので、スクラッチタイルを貼った鉄筋コンクリート造4階建ての近代的な劇場建築として昭和2年に竣工します。設計は各地で著名な劇場を手掛けた大林組の技師木村得三郎が担当し、武田五一が監修に加わっています。
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南に寄棟屋根の建屋、北側に切妻屋根を葺いた建屋が繋がり、北側の棟は鴨川に向けて区画を張り出します。
スクラッチタイルを貼った壁面に縦長窓や丸窓を配し、要所を切石でアクセントを添え、屋根には緑色の和瓦を葺きます。
この建物は日本舞踊の演舞場としての用途を踏まえて和風要素が意匠に盛り込まれていますが、大きな丸窓を配し、寄棟や切妻の瓦屋根を葺いた東面の眺めはどこか帝冠様式の趣もあります。
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三条大橋を渡って河原の遊歩道から眺めます。
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丸窓に見えた三階の窓は正確には八角形の窓。北側の建屋の一階部分には小さな六角窓を並べます。

先斗町通りに面した西側の様子。建物は土手の段差の上に建てられており、こちら側からは二層の建物に見えます。
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小さな入り口は楽屋口でしょうか。
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建物北端の小さな窓。何の用途かは分かりません。
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なまこ壁風に仕上げられた壁面。
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建物南側に設けられた正面入口。二階部分に設置された鉄柵は一階壁面のなまこ壁と合わせた意匠となっています。
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南側の袖壁を飾る化粧タイル。当時の近代建築に広く用いられたこのタイルは、京都で造られた泰山タイルと呼ばれるものです。
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by sunshine-works | 2025-06-08 11:30 | 近代建築 京都府 | Trackback | Comments(0)


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