2025年 03月 23日
旧中京郵便局外壁
京都市中京区の近代建築その10

旧日本銀行京都支店から二棟隔てた西側、三条通りと東洞院通りが交わる角地に日本郵便中京郵便局の局舎が建っています。
この建物は昭和53年にそれまで使われていた明治期の局舎を建替えて新築したものですが、外壁には前代の建物の部材が移植され、従前の外観がそのまま保全されています。
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外壁として保存されている先代の局舎は京都郵便電信局時代の明治35年に建てられたもの。煉瓦造二階建て、高く積んだ花崗岩の基礎の上に赤煉瓦を積み、窓周りと建物のコーナーに白石でアクセントを添えます。ネオルネッサンス様式の優美な意匠で建てられたこの局舎は、竣工当時この界隈で最も大きく華やかな建物でした。
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保存された外壁は三条通りに面した南面の全てと東西両面の南側の一部で、北面は取り壊して後方に建てた新棟が繋げられています。
壁面の保存に際しては、外壁の表面部分を鉄骨で支え、内側に新設したコンクリート壁と一体化する工法で行われ、煉瓦は建物荷重を担わない表層材として使われています。内部は二階建てから三階建てに改め、屋根もコンクリートの陸屋根に変更、外周に縁銅葺きのドーマー窓を残しています。
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三条通りに面して設けられた三か所の入口。それぞれが外枠を石で囲み庇屋根を小さく張り出します。
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中央の入口は両脇にドーリア式の石柱を添え、庇も破風飾りを添えて一段格式を高めた造りです。
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西側の入口は東端の入口と同じ造り。

当時前例のない工法を採用したこの建替えから既に50年近い年月が経過しました。元の建物の外装を保持しながら新たな躯体の一部として組み込むこの試みは近代建築の部分保存の先駆的な事例となり、その後多くの歴史的建物の建て替えに導入されて行きます。
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by sunshine-works | 2025-03-23 11:18 | 近代建築 京都府 | Trackback | Comments(0)


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