2024年 08月 25日
四階楼
山口県上関町の近代建築

山口県の南東部、室津半島の先端の町に、明治初期に建てられた和洋折衷様式の木造洋館が残されています。この建物は、元奇兵隊志士で、その後は当地で廻船業を営んだ小方謙九郎が店舗兼応接施設として建てたもので、地元の棟梁の設計施工によって明治12年に竣工しました。
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木造4階建て寄棟造り桟瓦葺き、壁面は漆喰仕上げ。正面側の各層に軒庇を張り出し、建物端に隅石を飾ります。
構造は伝統的な漆喰仕上げの和風建築を基本に、洋風意匠を取り込んだいわゆる擬洋風建築。
このような様式の建物は明治期から大正期にかけて各地に建てられますが、明治12年に建てられた四階楼はこれらの中でも極めて初期の築で、全国的にも数少ない現存例となります。
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小方謙九郎は現在の周南市徳山で生まれ、室津の回船問屋小方家の養子となった後に奇兵隊に参加して参謀を務め、明治維新後に再び室津へ戻り家業を継ぎます。
商業が栄えた室津の町で小方家は大店として知られた家で、この建物が建てられた明治初期には盛況を極めた海運業の元で更なる繁栄を遂げます。
この様な時代背景の中で建てられた洋風意匠四階建ての四階楼は、当時の室地の発展を象徴する建物となりました、
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建物コーナーを飾る隅石。切石を貼ったように見えますが、漆喰を盛って成形したものです。
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最上階の軒下にはこちらも漆喰で和風の模様が飾られます。
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店舗兼迎賓施設として建てられた四階楼ですが、大正14年には旅館に改装され、平成3年まで使用されます。その後は上関町に寄贈され、耐震補強と竣工当時の姿への修復を行い、展示施設として公開されています。
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室内は畳敷きで襖と障子で仕切る純和風の造り。唯一縦長の窓だけが洋風の意匠です。
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各階を繋ぐ小さな螺旋階段。階段室を設けず直接部屋に踏み入ります。
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三階の部屋に飾られる唐獅子牡丹の鏝絵。
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三階の裏面には小さな茶室が設えられています。
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最上階の大広間は四面にステンドグラスの窓を廻らせます。
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天井中央には鳳凰の鏝絵を飾ります。
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by sunshine-works | 2024-08-25 11:30 | 近代建築 山口県 | Trackback | Comments(2)
Commented by getteng at 2024-08-25 12:07
sunshine-worksさん
鏝絵がお見事です!
Commented by sunshine-works at 2024-08-28 10:53
> gettengさん
コメント有難うございます。仰るとおり、この建物の見所の一つがこの素晴らしい鏝絵だと思います。100年以上前のものがきれいに残っているのも驚きです。


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