2022年 06月 19日
広島市の被爆橋梁1
広島県広島市の近代建築その15

大田川の扇状地の上に造られた広島の街は、大田川本流から枝分かれした5本の大きな流れが市中を分かちます。
城下町として開かれた広島の街の発展は、これらの川を渡る橋によって支えられ、要所要所に大小の橋が架けられてきました。
明治期に西洋の架橋技術が導入されると、それまでの木橋は石造橋や鋼橋、RC橋へと架け替えられ、昭和初期には近代的な橋梁によって繋がれた交通網が整備されていました。

昭和20年8月6日、広島の中心部を壊滅させた原子爆弾は、これらの橋梁にも多大な被害を及ぼし、衝撃波や爆風による桁や橋脚の崩落やその後の火災での焼損で多くの橋が全壊や半壊の被害を受けました。これらの橋梁は戦後の復興の過程で多くが架け替えられ、修復を施して復旧した橋もその後の老朽化により順次新しい橋に更新されて行く事となります。こうして戦前に架けられた多くの橋は、戦後築の新しい橋に代わっていきましたが、市内中心部の幾つかの橋梁には、被災当時の桁と橋脚を今尚使い続けている橋が現存しています。
今回から3回に渡ってこれらの橋梁を紹介して行きます。
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広島市のホームページの掲載データによると、市内中心部(爆心地から半径5キロ以内)には、令和4年時点で6つの被爆橋梁が現存しています。今回は広島駅の南東の猿候川に架けられた2つの橋を紹介します。
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猿候橋の歴史は古く、城下町として広島の町が開かれた安土桃山時代から、代々この場所に架けられていました。
現在の橋は大正15年に架けられた橋長62.4メートルの鉄筋コンクリート桁で、由緒ある橋に相応しい豪華な装飾が施されていました。   
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それぞれに飾りを載せた親柱や中柱。モダンな意匠は当時最新のセッセッション様式を用いています。  
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橋上を彩った鉄製の装飾は、他の橋梁と同様に戦時中の資材供出によって取り払われました。戦後も柱飾りは復元されず、欄間の柵も石材に換えられた姿のまま供用されていましたが、平成28年に竣工時の姿に戻す改修工事が行われました。修復に際しては可能な限り元の資材を使用する事が優先され、石材については一部を除いて被爆当時のものが使われています。一見すると真新しい色合いに見えますが、洗浄あるいは表面を研磨して美しく仕上げたものと思われます。
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橋脚はコンクリート製の壁式橋脚。前後に切石を積んで補強しています。
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橋の北詰めには、修復時に撤去された柱飾りの一部が移設保存されています。
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猿候橋から下流へ約150メートル、猿候川を広島電鉄本線が渡ります。この荒神橋も被爆橋梁の一つで、現在の橋は昭和14年に架けられました。
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荒神橋は被爆橋梁の中で唯一電鉄が渡る併用橋で、初代の橋は大正元年の広島電鉄開業時に鉄道専用橋として架けられました。現存するこの橋は昭和14年に架け替えられた際のもので、橋長80メートルのRCゲルバー桁が渡されています。
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四隅に現存する親柱。小さなギリシア式円柱が笠石を支えます。モダンな猿候橋とは対照的な古典様式の重厚な印象です。
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親柱や高欄の石は被災時の火災やその後の風化によって赤茶色に変色していますが、束柱の色は明らかに異なり、後年に更新されたものと思われます。この部分は当初猿候橋と同様に鉄柵だった可能性もあります。
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橋脚はコンクリートアーチによる門型形状。前後に切石を飾ります。
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by sunshine-works | 2022-06-19 10:59 | 近代建築 広島県 | Trackback | Comments(2)
Commented by getteng at 2022-06-20 08:57
sunshine-worksさん
福屋駅前店の屋上からの撮影も面白かったかも?
但し、ガラス越しになりますが。。。
Commented by sunshine-works at 2022-06-27 00:45
> gettengさん
コメント有難う御座います。確かにそこなら面白い絵が撮れたかもしれませんね。


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