2021年 02月 14日
匹見川水系の水力発電所
島根県益田市の近代建築その4

中国山地北部を西流し高津川と合流する一級河川匹見川は、標高900m近い広島県境の水源から50kmの短い距離を下る急峻な河川で、蛇行する流れは渓谷を刻みながら平野部へ駆け下りて行きます。この匹見川中流には昭和前期に設置された三基の水力発電所が現存し、今尚現用施設として使われています。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_15534227.jpg

明治中期から始まる中国山地の水力発電所の歴史の中で、島根県はやや遅れた大正初期の窪田発電所がその始まりとなります。人口規模が小さく、工業化率も低い石見地区に於いてはさらに発電所の設置は遅れますが、豊富な水量と高低差を備えた匹見川が適地として選ばれ、豊川、匹見の両発電所が昭和3年に竣工、昭和18年にはその中間地点に澄川発電所が設置されます。

3つの発電所の中で一番下流側に位置する豊川水力発電所は昭和3年9月の竣工。完成時の出力3,700キロワットは当時の島根県で最大の発電所でした。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16015668.jpg
匹見川水系の水力発電所_f0116479_15551003.jpg
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16000305.jpg
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16004198.jpg

鉄筋コンクリート2階建て、アーチ窓を周囲に廻らせ、軒下にディンティルを飾るルネッサンス風の意匠です。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_15554878.jpg
匹見川水系の水力発電所_f0116479_15582347.jpg
匹見川水系の水力発電所_f0116479_15564035.jpg
匹見川水系の水力発電所_f0116479_15570758.jpg
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16012803.jpg

豊川発電所から東へ5km程上流側に設置された澄川水力発電所。時代が下った昭和18年竣工のこの発電所は出力9,700キロワットに達し、豊川発電所の3倍となる県下最大級の発電能力を誇りました。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16152222.jpg


古典様式風の豊川発電所とは真逆のモダニズム系の意匠。この様式は当時の流行に添ったものと思われますが、質実を旨とする戦時下の風潮とも合致し、大型建造物の建築規制下で建てられた戦中の建物の多くに採り入れられました。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16200815.jpg

直線と平面のみを用いた本館部分で唯一曲線があしらわれた配水口周りのアーチ型。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16270991.jpg


3つの発電所の中で最初に送電を開始した匹見発電所。昭和3年7月竣工。完成時の出力は1,870キロワットでした。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16350018.jpg

豊川発電所とは同年の築。屋根の形が異なりますが、側面4列、正面2列の付柱や側面上部に並ぶ5つの欠円アーチなど共通点が見られます。因みに、この匹見発電所の外壁はRCではなく、コンクリートブロックを積み上げる工法が取られています。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16342049.jpg

崖沿いの道を進んで建物の間際へ。
匹見川水系の水力発電所_f0116479_16390346.jpg

上部のアーチ窓は塞がれています。


by sunshine-works | 2021-02-14 11:01 | 近代建築 島根県 | Trackback | Comments(0)


<< 旧畑迫病院      旧都茂村図書館 >>