旧山陰電気米子変電所

鳥取県米子市の近代建築その３

米子駅の北東、住宅や個人商店が並ぶ一角にかつての変電所が残されています。
現在は改装されて共同住宅として使われているこの建物は、旧山陰電気の変電施設として建てられました。

米子とその周辺を配電地域とする山陰電気の設立は明治４０年。明治４２年に日野川水系の旭水力発電所が送電を開始し、米子に最初の電灯を灯します。
県西部の拠点都市として発展を続ける米子市の電力需要はその後も拡大の一途を辿り、山陰電気は日野川水系に発電所を増設、米子市内にも鳥取最初の火力発電所を開設するなどしてこれに対応し、大正期には市街地の殆どが電化されていきます。
大正７年に建てられたこの旧米子変電所は、米子が近代都市として変貌していく過程を支える重要な役割を果たしました。

東の妻面に設けられた入口。
玄関扉は取り替えられていますが、入口周りは当時の姿で残ります。



居住施設では無いこの種の建物の窓の大きさや数は必要最低限とされるのが通例ですが、この建物は一般の住居と同等な窓を設けています。
変電所時代の古い写真を見ても今と変わらぬ窓配置となっており、後年の改築では無いようです。
市街地に建てられる事を踏まえて設計上の配慮が為されたとも思えます。




街中に残された古い電力施設が店舗や飲食店に転用される事例は数多くありますが、このように住居として使われている例は現在では珍しいものです。
用途を変えて伝わるこの旧変電所は、鳥取県では数少ない煉瓦建物の現存例としても貴重な歴史遺産となっています。