2012年 10月 17日
岡山県倉敷市の近代建築その7 倉敷の観光名所美観地区の中央部、大原美術館から鶴形山へ抜ける道の途中に、大正期に建てられた銀行が建っています。 旧第一合同銀行倉敷支店として建てられ、現在は中国銀行倉敷支店本町出張所として使われているこの建物は、岡山県内の現役銀行店舗として最古のものです。 設計:薬師寺主計、施工:藤木工務店。 現在の中国銀行の前身となる第一合同銀行は、大正8年に岡山地域6行の合併によって誕生、母体となった倉敷銀行頭取の大原孫三郎が頭取を務めます。この倉敷支店は同行の中核店舗として大正11年に旧倉敷銀行本店から建て換えられました。 全体の意匠としては当時の銀行建築に多用されたルネッサンス様式が基調。 ドーマー屋根を乗せた大きな寄棟屋根は当初はスレート葺き、その後に銅板葺きに替えられています。 北面と西面を飾るドーリア式のオーダー柱、1階のアーチ窓、御影石を組んだ玄関ポーチ等、定番とも言える構成ですが、それまでの銀行建築に比べると重厚感や荘厳さが薄まり、広く大衆に向けられた銀行を指向した意匠とも取れます。 全体の構造は鉄筋コンクリート、石造、煉瓦造、木造が組み合わさった混構造と呼ばれる形式。部位によってこれらを使い分けています。 基礎は笠岡諸島産の御影石。岩肌そのままで仕上げたルスティカ積みと呼ばれる手法を用いています。 その上の外壁表面は切石積みに見えますが、これは塗布したモルタルに筋を引いて石組みを表現したものです。 正面側となる北面。2階の軒まで延ばされた6本のジャイアントオーダーを等間隔に並べ、中央にやや小ぶりな玄関を設けます。 アーチのファンライトを飾る美しいステンドグラス。 南隣に大原家住宅、その奥手に大原美術館を望む西側面。 この西面にもほぼ同規格の玄関が設けられています。 第一合同銀行倉敷支店の建設にあたっては、前年に建てられた日銀岡山支店が大きな刺激となりました。 大原家の建築顧問を務めていた薬師寺主計は、日銀岡山支店を施工した藤木工務店の技術を高く評価、この第一合同銀行倉敷支店の施工を任せます。以降この3者は深い繋がりを持ち、多くの大原家関連施設を手掛ける事となります。 倉敷の中心部には大原孫三郎と薬師寺主計・藤木工務店の手になる優れた近代建築が数多く残されています。これらは古い町並みに良く融け込み、優れた観光資源として貴重な役割を果たしています。
by sunshine-works
| 2012-10-17 20:24
| 近代建築 岡山県
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