2012年 07月 18日
旧堺家住宅洋館(倉の館三角邸)
香川県宇多津町の近代建築

宇多津の中心部に、肥料商として成功を収めた堺家の別邸が残されています。
純和風様式で建てられたこの建物の一角に、急勾配の三角屋根を持つ小さな洋館部分が添えられています。昭和初期に主屋と共に建てられたこの建物は、宇多津町に現存する唯一の戦前築の洋風建築となります。
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丸亀と坂出に挟まれた宇多津は香川県で最も小さな自治体ですが、海に面したこの地には古くから製塩業が栄え、また讃岐の特産品が集まる交易の拠点として発展を遂げました。
肥料の商いで大きな財を得た堺家が昭和の初期に迎賓施設として建てたのが、和風建築の主屋と洋館からなるこの別邸です。
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尖った屋根が遠くから良く目立つ洋館。敷地の北側に建てられています。
一階、二階ともに間取りは一部屋づつ。独立した建物では無く、基礎や外壁の一部は主屋に繋がっています。
一階が書斎兼応接室、二階は子供の勉強部屋に充てられていたとの事です。
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外装の一部は近年に改装されています。屋根は当初のスレート葺きから平瓦に変更され、ステンドグラス風の窓が追加されました。屋根瓦については然程の違和感は無いものの、おそらくアクリル製と思われるステンドグラス風窓は質感に乏しく、建物の風合いとも馴染まない、些か残念な結果になっています。
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建物の高さの三分の一を占める大きな屋根。屋根の先端には避雷針が付けられています。
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入母屋造2階建ての主屋。内装、外装共に贅を凝らした造りです。
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敷地の外から主屋を眺めます。
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住居の一部分を洋館風の造りとする例は、邸宅から個人住宅まで規模の大小を問わず当時広く行われていました。慣れ親しんだ日本家屋を生活の場とし、洋館部分は接待や社交の場とするのが一般的だったようです。
戦後、住宅スタイルが両者が融合した形に進化するにつれてこの手法は廃れ、「日本家屋」や「洋館」といった名称も過去の物となっていきました。
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by sunshine-works | 2012-07-18 20:16 | 近代建築 香川県 | Trackback | Comments(2)
Commented by tajiri8jp at 2012-07-26 20:32
一瞬、目を疑うような立派な三角屋根ですねえ。
Commented by sunshine-works at 2012-07-26 20:46
tajiri8jpさん ご無沙汰致しております。
実際に目を疑う程の三角屋根でした。
均整とかバランスと言った概念とは無縁の、思い切ったデフォルメにはある意味で潔良さを感じます。


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