岡山禁酒会館

岡山県岡山市の近代建築その１５

ルネスホールから県庁通りを北へ進んで程なく、右手に古びた洋館が見えて来ます。岡山禁酒会館と言う変わった名称のこの建物は、市内では珍しい大正期に建てられた木造の洋風建築物です。大正１２年築。

ヨーロッパで広まった禁酒運動を受け、明治期に全国各地に禁酒同盟が結成されます。（その多くは宗教団体を母体としたものでした。）
キリスト教系の組織である岡山県禁酒同盟の活動拠点として建てられた岡山禁酒会館は、特徴的な折屋根を持つセセション風木造３階建て、１階に食堂、2階と３階はホールや会議室、宿泊所に充てられていました。



各地の禁酒同盟はその後統合され、全国組織の日本禁酒同盟に発展し現在に至ります。この建物は各地の禁酒会の施設の中で、戦前から受け継がれる唯一の施設となっています。


壁面はモルタルの表面を掻き落としたドイツ壁仕上げ。腰まわりには煉瓦タイルが貼られています。

正面の主要部には白い化粧タイルが貼られています。



この建物を特徴付けているマンサード屋根。


戦災によって市街地の殆どを消失した岡山の中心街に、現存する戦前の建物は極僅かです。奇跡的に生き残った木造のこの建物は、県都岡山ならではのモダンな先進性を感じさせる貴重な文化遺産です。