2009年 10月 13日
犬島精錬所
岡山県岡山市の近代建築その1

岡山市の南東沖に浮かぶ小さな島に、明治期の精錬所施設が半ば廃墟のように残されています。岡山市を巡る近代建築探訪の初回は旧犬島精練所の建物跡を紹介します。
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宝伝港から船で約5分、周囲3キロ足らずの小さな島が犬島です。御影石の産地として有名だったこの島に明治42年、銅の精錬施設が築かれます。
当初の精錬所は銅鉱山があった倉敷の帯江に置かれていたのですが、周辺への環境汚染が深刻となった事から洋上のこの島が移転先に選ばれました。
島北部の小高い丘一帯には、巨大な煉瓦煙突を備えた精錬炉や作業場、倉庫、発電所等一連の施設が築かれていきます。
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広大な敷地には様々な建物跡が残っていますが、完全な姿で残っている建物は一つもありません。殆どが屋根を失い、崩れかけた壁や床だけの姿となっています。
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建材として使われている独特の色合いの煉瓦は、精錬時に出来る鉱滓を固めたカラミ煉瓦と呼ばれるものです。壁面だけでなく、路面の敷石としても使われています。
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近代産業に不可欠の資源である銅の生産は、経済の発展に伴って順調な伸びを示し、犬島の人口は3,000人を越えるまでに膨れ上がります。しかし、操業を開始して僅か10年後の大正8年、銅価格の暴落により精錬所は廃止されてしまいます。
以来、90年以上の長きに渡り、これらの施設は放棄され風雨に晒される事となります。
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施設の中心に並ぶ炉の跡
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煙突は最も背の高い円柱型の物の他に、数本の角柱の煙突が確認出来ます。何本かの煙突は劣化によって途中で折れています。
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精錬施設から少し離れた場所にある旧発電所の跡。手前には井戸を模したオブジェが据えられています。
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海岸線付近の煉瓦を敷き詰めた一角に、小さく区切られた小壁が並んでいます。精錬を終えた銅はこの出荷場から船に積み込まれて行きました。
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長い間廃墟同然となっていた精錬所ですが、現在は、岡山を本拠とするベネッセコーポレーションによってアートプロジェクトの会場に利用されています。半地下形式で建てられたアートパビリオンは旧精錬所建物と一体となって新たな景観を成し、それぞれの個性を引き立てあっています。
さすがにこれだけ広大で、なお且つ建物の用を為していない施設ともなると、普通の用途での再利用はまず不可能でしょう。廃墟をアートとしてそのまま利用するこの発想は、条件さえ合えば有効な活用法となるかもしれません。
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by sunshine-works | 2009-10-13 23:26 | 近代建築 岡山県 | Trackback | Comments(2)
Commented by モネ母 at 2010-11-02 20:50 x
すばらしい犬島のレポートですね。
10月31日に念願の犬島、精錬所へ行ってきました。この写真にあるとおりの風景でした。
再びあのもの哀しい、でも懐かしい雰囲気に浸れました。
すばらしい写真をありがとうございました。
Commented by sunshine-works at 2010-11-02 22:27
モネ母さん、始めまして。
この日はうす曇りで、色調の暗い写真になってしまいましたが、この廃墟が醸す雰囲気を表すにはむしろ好都合だったかも知れません。
もの哀しくて懐かしい、とは言い得て妙で、全く同感です。多くの産業遺産で同じ様な感慨にひたりますが、特にここはその想いを強く感じます。


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