2009年 07月 20日
岡山県備前市の近代建築その4 三石から幾つもの峠を越えて北方向へ、山の中の小さな集落に古い郵便局が建っています。昭和12年に建てられたこの建物は木造の局舎としては数少ない戦前築の現役郵便局です。 備前市の北端、美作との国境に位置するこのあたりは、古くは山岳仏教の拠点として栄えた歴史を持つ程に山深い地です。日本の原風景さながら、のどかな景色が広がる山村の集落の中に平屋の局舎が建っています。 この付近は集落の中心部と言えなくもないのですが、商店や公共施設が並んでいる訳でもなく、郵便局だけが畑の中にポツンと建っている、と言った方が正しいかもしれません。薄いピンク色に塗られた局舎が美しい景色に溶け込んでいます。 築後70年を過ぎた建物なのですが、現役局舎だけに手入れが行き届き、然程古さを感じさせません。見慣れたJPのオレンジ色のマークや郵貯ATMの看板が何の違和感もなく付いています。 ATMコーナーが設置されたり、エアコンが取り付けられたりはしていますが、基本的には竣工時の状態から殆ど変わっていないと思われます。 都市部から遠く離れた地域では、情報伝達や経済活動の媒介の殆どを郵便局が担っていました。地域と中枢をつなぐ窓口としての郵便局の役割は、今日とは比較にならないくらいに重要なものだったと思われます。 どこの集落も、その地の名士が郵便局長を勤め、地元の棟梁達が存分に手を掛けた偽洋風建物が局舎に充てられました。 この様に古い木造の郵便局が現役で使われている例は全国でも数少なくなってしまいました。民営化によって合理化を迫られる中、そろそろ耐用年数を迎えるこれら局舎の今後がどうなるのか、非常に気がかりです。
by sunshine-works
| 2009-07-20 23:38
| 近代建築 岡山県
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