2009年 04月 15日
姫路の近代建築その3 姫路城の東南、大手前公園近くの通りに面してスクラッチタイル貼の建物が建っています。現在はNTTの庁舎として使用されているこの建物は旧逓信省時代の昭和5年に姫路電報電話局として建てられました。設計:上浪朗(逓信省営繕課) ![]() この時代の庁舎らしいガッシリとした構えの建物です。装飾意匠を極力抑え、直線的な縦横のラインの組合わせで建物全体の美しさを表現しています。 ![]() ![]() 戦前の庁舎建築は、現在と違って各省庁自前の施工部門(営繕課)により設計を行っていました。このため、各地に建てられた庁舎や行政機関は各省庁の営繕課独特のカラーを持つデザインになっていました。取り分け、逓信省(郵政省の前身)の営繕課は他の省庁に比べて先取の気鋭が強く、常に時代の先端を行く設計デザインを取り入れていました。著名な設計者として知られる吉田鉄郎や山田守を中心に、表現主義からインターナショナルスタイル(いわゆるモダニズム)へ至る当時の建築様式の流れに沿ったデザインの庁舎を生み出していきます。上浪朗は吉田や山田の次の世代の設計者として多くの逓信省建築を手がけ、関わった建物は逓信省営繕課で最も多い数となりました。以前当ブログで紹介した芦屋電話局も上浪朗の作として知られています。 ![]() 茶褐色の色合いや飾り気の無いシンプルなデザイン故に地味な印象を受けます。この前年に竣工した芦屋電話局ではアーチ窓や装飾タイルを使って華やかさを演出していましたが、この建物はそれらを排して非常にクールなイメージに仕上げています。東京・大阪の中央郵便局へと繫がる逓信省のモダニズム志向が強まっていく途上のデザインとも見て取れます。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 玄関と思われる部分ですが、建物に比べると狭い間口です。それとも他に入口があったのでしょうか。建物全体の中で、唯一この部分にのみ装飾的な表現が施されています。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() この窓台は旧芦屋電話局の物とデザインがそっくりです。 ![]() ![]() 建物は道路に面して横長に広がって見えますが、北側にも建物が伸びてL字型の構造となっています。 この部分が北側に繫がる部分です。 ![]() ![]() 各地に建てられた逓信省営繕課による局舎の大部分は失われ、現存する建物は数えるほどになってしまいました。幾つかの建物は他の用途に転じて保存活用の途を得ましたが、現役で使われている局舎については今後どうなっていくのか、何とも見通しが立たない状況です。 現在、東京・大阪の中央郵便局の保存を廻って活発に討議されていますが、各地に残る他の逓信省建築もこれに劣らない優れた文化的歴史的な価値を持つ重要な遺産として保護されるべき物と思います。 ![]()
by sunshine-works
| 2009-04-15 19:48
| 近代建築
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