2009年 04月 03日
高砂の近代建築その6 旧山陽道(西国街道)沿いの古い集落である魚橋には現在も当時の雰囲気を伝える旧家が並んでいます。集落の中央、旧街道に面して建つこの洋館は90年以上に亘って当地で郵便局舎として使われてきました。 JR線の北側の丘陵地帯に位置する旧阿弥陀村魚橋地区は、海沿いの高砂や荒井とは成り立ちも交易路も異なり、明治以降に工業地帯として発展する臨海部のような大きな変化は見られませんでした。旧印南郡の中枢として役場や行政機関が置かれますが、旧街道沿いに古い家々が残る風情ある景色が現在まで保たれて来ました。 この地に郵便局を設置するにあたり当時の地方郵便局の多くがそうであったように、地元の名士に事業を委託し、その土地家屋の提供を受けて業務を行いました。魚橋郵便局は土田家の家屋の一部を局舎として明治7年に開設され、明治37年にこの洋館造りの2代目局舎に建て替えられました。 狭い街道に面して建つ、一際目立つ下見板貼の洋館です。各窓に付けられた鎧戸や切妻屋根の玄関庇、玄関ペディメントの門灯(複製ですが)、コーナーに貼られた地元の竜山石の淵飾り等、小さな建物ですが当事の洋館の意匠が豊富に盛り込まれた内容となっています。 コーナーを飾る竜山石。高砂の竜山で産するこの石は古くから建築材料に用いられました。明治以降に建てられた近代建築にも数多く使用されています。 残念ながら正面入口は塞がれています。どのような扉が付いていたのでしょうか。 この局舎は新局舎の完成により1990年に任を終えます。当初老朽化の為取り壊される予定だった建物は、存続要望を受けて保存される事となり、2004年には登録文化財に指定されます。 今では修復を終え美しい薄緑色にペイントされた優美な姿が街道筋の古い家並みに溶け込んでいます。 このような古い歴史を持つ地方の郵便局舎の多くは、その役割を終えた後解体されてしまいます。元々が民間の土地家屋を利用したものなので、個人の負担で修繕維持していくには大きなコストが必要となるのがその理由でしょう。今後失われていく町や村の郵便局の一つでも多くがこの魚橋郵便局のように残されて行く事を願いたいものです。
by sunshine-works
| 2009-04-03 20:30
| 近代建築 兵庫県
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