タグ:図書館 ( 3 ) タグの人気記事

2012年 09月 19日
旧鎌田共済会図書館
香川県坂出市の近代建築その7

坂出駅から線路沿いに西へ程なく、市街地の一角に置かれた緑地公園の隣に大正期に建てられた旧図書館が残されています。現在は郷土資料館として使われているこの建物は坂出の実業家鎌田勝太郎が設立した鎌田共済会の私設図書館として大正11年に建てられました。設計・施工:竹中工務店。
f0116479_372187.jpg

坂出で醤油醸造と酒造を営む鎌田家の長男勝太郎は、家督を継いだ後に製塩業に進出。塩田勃興の中心的な役割を果たし、坂出を日本有数の製塩地帯へと発展させます。
塩田事業で大きな成功を収め、その後政界へ進出を果たした勝太郎は、地元文化振興を目的として私財を供して財団法人鎌田共済会を設立、その拠点として建てられたのがこの建物です。
f0116479_3235918.jpg

f0116479_3242260.jpg

坂出市内に現存する大正期の建物としては数少ない本格的な鉄筋コンクリート建物です。
直線・平面で構成されるシンプルな外観ですが、整然と並ぶ2階のアーチ窓やその上に立ち上がるパラペットに現される様式美に、当時最新の流行を取り入れた優れた建築意匠が見て取れます。
f0116479_4124574.jpg

f0116479_4125921.jpg

f0116479_4131371.jpg

中央に据えられた車寄せ。太い柱で分厚い庇を支えます。
f0116479_2454723.jpg

f0116479_342229.jpg

f0116479_3562251.jpg

f0116479_357046.jpg

人造石を貼った玄関周り。玄関扉は建物の規模に比べると小ぶりな印象です。
f0116479_3534869.jpg

f0116479_3533153.jpg

f0116479_355217.jpg

f0116479_3552114.jpg

鎌田共済会図書館は、戦前の私設図書館の中でも全国有数の規模を誇る存在として知られていました。
その後、この建物は坂出市立図書館として長きに亘って使われましたが、新図書館の竣工に伴って再び鎌田共済会に所有が移され、現在は郷土資料館として使われています。
f0116479_425911.jpg

建物左手にはもう一つ小さな入口があります。
f0116479_434422.jpg

f0116479_421185.jpg

f0116479_431636.jpg

全国に残る戦前築の図書館の遺構の中でも、意匠性に優れ、規模も大きなこの建物は、地方に於ける図書館建築の良例として貴重です。
隆盛を極めた当時の坂出の賑わいを今に伝える存在として、歴史資料としても重要な建物と思えます。
f0116479_4134636.jpg


by sunshine-works | 2012-09-19 23:57 | 近代建築 香川県 | Trackback | Comments(0)
2012年 06月 27日
旧鳥取県立図書館
鳥取県鳥取市の近代建築その5

鳥取市の中心市街の一角に、かつての鳥取県立図書館が残されています。現在は展示施設に利用されているこの建物は、昭和5年に置塩章の設計で建てられました。
f0116479_12195724.jpg

鉄筋コンクリート2階建て、公共施設らしく古典様式を基調とした建築意匠。この種の建物を得意とする置塩章ならではの手腕が存分に発揮されています。
f0116479_1221422.jpg

鳥取市の官庁街の近く、県都鳥取の中枢にあたるこの地に県の中央図書館として建てられました。この図書館が建てられた当時の鳥取市の人口は4万人に満たないものでしたが、同程度の地方都市の図書館の中では規模が大きく、豪奢な施設だったと思います。
f0116479_12221357.jpg

f0116479_12252892.jpg

陸軍技官から兵庫県の営繕課長に転じた置塩章は、在任中の8年間に県内各地で数多くの公共建築を手掛けます。昭和3年に独立した後は活動範囲を全国に広げ、培った公共建築の設計技法を駆使して各地に優れた庁舎を残します。
この旧鳥取県立図書館は独立後に置塩章が手掛けた兵庫県外の公共建築として、宮崎・茨城県の両県庁舎と並ぶ数少ない現存例です。
f0116479_12232558.jpg
f0116479_12224925.jpg

f0116479_1223529.jpg

f0116479_12233727.jpg

f0116479_12234971.jpg

f0116479_1257583.jpg

昭和5年から長く図書館として使われたこの建物は、老朽化により一時期取り壊しの計画が立てられましたが、保存活用を求める要望が尊重され、耐震補強を加えて外観部を保存する工事が行われました。
補修を終えた平成7年から現在の展示施設「わらべ館」として再活用されています。
この建物について「復元建物」や「外壁保存」と記している資料がありますが、建物躯体は当時の姿が保たれています。「旧建物の外郭を残し、後方に新造部分を繋いだ建物」とするのが正しい記述と思えます。
f0116479_12275944.jpg

f0116479_1228931.jpg

f0116479_12281979.jpg

屋上の塔屋部分。一連の置塩章の作品に共通するゴシック調の意匠で飾られています。
f0116479_12285545.jpg

f0116479_12291169.jpg

鳥取城の大手前にあたるこの一角は、古くから文教地区として栄えました。現在も多くの文化施設が並ぶ中で、風格を湛えるこの建物はランドマークとして優れた景観を為しています。
f0116479_12293035.jpg


by sunshine-works | 2012-06-27 20:14 | 近代建築 鳥取県 | Trackback(1) | Comments(2)
2010年 05月 09日
旧宝塚文芸図書館
宝塚の近代建築その5

平成15年、惜しまれつつ90年に及ぶ歴史を閉じた宝塚ファミリーランドの跡地に、蔦が絡まる古い鉄筋コンクリート建物が残されています。
現在、中華料理店として利用されているこの建物は宝塚ファミリーランドの前身である宝塚新温泉に併設された図書館として建てられました。昭和6年築。
f0116479_17264612.jpg

箕面有馬電気鉄道が武庫川左岸に開いた宝塚新温泉は、単なる温泉ではなく、遊園地や動物園、演劇場が一体となった総合娯楽施設で、戦後の一時期各地で流行ったヘルスセンターの元祖ともいえる内容でした。
この図書館もそれら一連の施設の一つとして、温浴客に書籍や雑誌の閲覧を提供する場として設けられたもので、大正4年に初代の建物が建てられています。
f0116479_17281674.jpg

f0116479_17283642.jpg

その後この図書館は演劇関係の図書を中心とする宝塚文芸図書館に発展します。戦後に収蔵図書が池田市へ移された後は、宝塚歌劇団の施設として使われていました。
現在は中華レストランになっています。玄関周りの意匠や、壁面のレリーフが醸す重厚な雰囲気は、この種の用途に良く似合います。
f0116479_17395993.jpg

f0116479_17401437.jpg

f0116479_17405338.jpg

f0116479_17411171.jpg

f0116479_17403220.jpg

f0116479_17412987.jpg

f0116479_17543812.jpg

壁面を覆う蔦がこの建物の長い歴史を実感させます。
f0116479_18132434.jpg

f0116479_17503220.jpg

f0116479_17504933.jpg

f0116479_1751930.jpg

f0116479_1752230.jpg

f0116479_17513219.jpg

f0116479_1751465.jpg

f0116479_17541220.jpg

f0116479_17531781.jpg

宝塚ファミリーランドの跡地は住宅展示場や商業施設、公園施設へと変わりました。現在の宝塚の発展の元となった宝塚新温泉ですが、戦前に建てられた施設の痕跡は殆ど残されておらず、この建物が唯一のものとなっています。
f0116479_1757786.jpg


by sunshine-works | 2010-05-09 22:53 | 近代建築 | Trackback | Comments(1)