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2012年 04月 30日
五臓円ビル
鳥取県鳥取市の近代建築その2

鳥取市の中心部、智頭街道に沿った旧市街の一角にスクラッチタイル貼りの商業ビルが建っています。当地で古くから営む薬局店舗の建物として昭和6年に建てられました。
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鉄筋コンクリート3階建て、外壁にスクラッチタイルを貼り、建物角にアールが付けられます。
コーニスや繰形が廻らされた壁面に縦長窓を並べ、屋上の北東角にはパラペットを立ち上げます。小規模な建物ながら手の込んだ造りです。
前回紹介した坂出の角本金栄堂と建てられた時代も近く、同時代の洋風商業建築に共通する意匠表現が見て取れます。
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規則的に並ぶ縦長窓。2階と3階で高さが変えられています。
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1階部分を端から順に見ていきます。まずは南東側から。
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角を周って北面を眺めます。
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外壁のクローズアップ
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現在の建物3階には喫茶店が設けられており、館内には自由に入れます。
薬局店舗として建てられた当時も最上階にレストランが設けられていました。
モダンなビルと当時まだ珍しかった西洋料理店やカフェの取り合わせは鳥取のハイカラスポットとなっていた事でしょう。
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鳥取の中心街は戦後の大火で古くからの建物の殆どが失われてしまいました。
奇跡的に焼け残ったこのビルは、唯一残る戦前の商業建造物として当時の姿を伝えます。
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by sunshine-works | 2012-04-30 17:11 | 近代建築 鳥取県 | Trackback | Comments(3)
2012年 04月 26日
角本金栄堂
香川県坂出市の近代建築その1

坂出駅の北に続く商店街の入口に古い商業建物が建っています。この建物は店舗兼住居として昭和9年に建てられました。
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東西に連なるアーケードが駅前通りと交わる地点に建てられています。1階部分が店舗(食品卸)、2階から上が住居として使われていました。現在はアーケードに半ば覆われた形となっていますが、竣工当時は角地で良く目立つ建物だったと思われます。
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塔屋付きの木造3階建て、外壁にはスクラッチタイルを張り、コーナーにそって角を落とします。
一見するとRC造に見えますが、規模の大きな看板建築です。
改装された1階部分こそ竣工時の面影はありませんが、2階以上は概ね当時のまま、丸窓が飾られた塔屋やファンライトを付けたアーチ窓、水平を強調する窓上の庇等豊かな装飾表現が見られます。
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コーナーに付けられた縦書き看板。古い書体が良く似合っています。
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近くにある有名な建造物、坂出人工土地からの遠望。
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地方の中小都市には市街地の一角に古い商業ビルが残されている例が多くあります。(その多くはこの建物と同じ位の規模、且つ戦前の洋風商業建築としてその町で唯一の現存例となっている事も共通しています)
この建物もそれらの一つですが、他の事例同様、当時の商業建築の特徴を良く伝え、賑やかだった頃の町の雰囲気を偲ばせる存在となっています。
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by sunshine-works | 2012-04-26 22:25 | 近代建築 香川県 | Trackback | Comments(2)
2012年 04月 22日
堀家時計店
香川県丸亀市の近代建築その3

丸亀駅の北側、線路に沿った旧市街地の一角に現在は時計店として使われている古い建物が建っています。
この建物は元々は医院として建てられ、その後ホテルを経て現在の用途となりました。昭和8年築。
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一見するとRC造と思えますが、日本家屋の正面を洋風意匠に仕上げた、いわゆる看板建築です。
正面の意匠は完璧に西洋建築を表現し、かつ側面の殆どが隣戸に接して隠れている事もあって、看板建築である事に気づきません。
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中心の玄関両脇に柱形が添えられ、中央に立ち上がるパラペットにオーナメントを飾ります。
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軒下のコーニスや階上のパラペットの見事な出来栄え。「看板建築」の概念を超える完成度です。
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玄関脇に添えられた柱形。
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古くから開けたこの一角にはこのようなモダンな洋風建築が幾つも点在していましたが、近年その多くが改築や取り壊しによって失われてしまいました。
界隈のかつての賑わいを偲ぶ建物として、また丸亀に於ける医院建築の数少ない現存例として貴重な資料となっています。
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by sunshine-works | 2012-04-22 23:57 | 近代建築 香川県 | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 18日
旧百十四銀行丸亀支店
香川県丸亀市の近代建築その2

丸亀駅から南へ続く商店街の一角に旧銀行店舗が残されています。
現在はイベントスペースとして使われているこの建物は、百十四銀行丸亀支店として昭和2年に建てられました。
設計・施工:清水組
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鉄筋コンクリート造2階建て、建物外壁に人造石を貼ります。
北に正面を向け、東面に路地が通じます。現在はアーケードに塞がれ全貌を眺める事が出来ませんが、その優美な姿は、長きに渡って中心街のランドマークとして親しまれて来ました。
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明治に始まり大正期に頂点を極める威厳と風格を備えた重厚な銀行建築は、昭和に入るとより幅広い顧客層を取り込む必要から権威主義的な印象を薄めていきます。
昭和2年に建てられた旧百十四銀行丸亀支店は、この時期に建てられた銀行建築の現存例の一つです。
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建物正面の詳細です。
ジャイアントオーダーに代表される従来の古典主義銀行建築に比べると意匠表現は簡素化されていますが、要所要所に適度な装飾が施され、重々しさを減じつつ壮麗さを保ちます。
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玄関はやや小ぶりな造り。銅板製の入口庇を張出します。
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南北方向に交わる小路から東側面を眺めます。
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側面の通用口にも銅板製の庇が付けられています。
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軒や壁面を飾るレリーフ。側面は古典様式の伝統を残します。
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店舗内部です。正確には2階建てではなく一部2階建てと呼ぶべきでしょうか。
内部に広い吹抜け空間を設け周囲に犬走りを巡らせる、当時の銀行建築で広く使われた造りです。
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店舗2階部分です。
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外装に於いてギリシア・ローマ風意匠は抑えめですが、内部空間にはトスカナ式の柱頭飾りやアーカンサスの彫刻が多用されており、旧来の銀行建築の雰囲気が色濃く残されています。
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戦前に建てられた百十四銀行の店舗としては他に高松本店長尾支店、坂出支店が現存しています。同一銀行の店舗が4店も当時の姿で残っている例は珍しく、建てられた時代に応じた様式の変遷を伺う優れた資料となっています。
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by sunshine-works | 2012-04-18 18:20 | 近代建築 香川県 | Trackback | Comments(2)
2012年 04月 14日
日本基督教団高梁教会
岡山県高梁市の近代建築その10

古い町並みが残る高梁市の中心街の東、美観地区の外れに古い木造の教会建物が建っています。
この日本基督教団高梁教会は、岡山県内に現存するキリスト教教会としては最も古いものとなります。
明治22年築。
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元々岡山は信仰心が強い土地柄で、明治期に信教が自由化されると各地で多様な宗教、宗派が興ります。
それまで禁教とされていたキリスト教も県内各地で活動を始めますが、中でも高梁は早くからキリスト教信仰が根付き、県中西部に於ける布教の拠点となっていきます。
城下町として学問・思想が栄え、高い精神文化を有していた事が、新しい文化を受け入れる土壌となったのかもしれません。
また、この高梁キリスト教会は地域の信仰の中心となったのみならず、教会所縁の多くの人達が教育・文化の担い手となって高梁の発展を支え、更に中央で活躍する優れた人材を輩出しました。
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設計は伊代今治の大工吉田伊平。当時の教会建築には、キリスト教に帰依した棟梁、いわゆるクリスチャン棟梁によって設計施工されたものが多数ありましたが、この吉田伊平もその一人で、郷里の伊予で教会を手掛けた後に請われて岡山に赴き、この高梁教会と倉敷の天城教会(明治23年)を建てています。
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庇の上に屋根付きのバルコニーを乗せた2層式の玄関。
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玄関ポーチの足周りには花崗岩が使われます。床面のタイルは後年のものでしょうか。
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内部は見学自由との事なので入らせて頂きました。
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建物廻りをもう少し
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屋根上には小さな鐘楼が取り付けられていますが、これは戦後に追加された物との事です。
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城下町の伝統を受け継いで、現在の高梁市は文教都市としての一面を有しています。
高梁の文化発展にこの教会が果たした役割は大きなものとなったようです。
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by sunshine-works | 2012-04-14 23:36 | 近代建築 岡山県 | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 10日
旧手荘町役場
岡山県高梁市の近代建築その9

高梁市の西部、川上町の中心部に現在は高梁市川上地域局として使われている木造2階建ての建物があります。平成16年まで旧川上町役場が置かれていたこの建物は、川上町の基となった3町村の一つ、手荘町の役場として昭和4年に建てられました
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木造2階建て、下見板貼り、和瓦を葺いた寄棟屋根。この時代の公共建築の典型と言える取り合わせですが、随所に様々な意匠が凝らされ、豊かな個性を放ちます。
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建物中央に立ち上がる切妻屋根を被せた三角破風、太い丸柱が支える分厚い玄関庇、部分的に用いられるドイツ壁、ハーフティンバーによる山荘風の意匠等々、従来の役場のイメージから踏み出した新しい試みを見て取れます。
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建物正面に設けた二つの玄関。中心から逸れて不規則に並びます。
シンメトリーを旨とするこの種の建物は中央に入口を構えるのが本来です。
構造上あるいは用途上の何らかの理由で敢えてこの位置としたのでしょうか。
然程離れていない位置にこのような形で二つの入口が設けられているのも不思議な光景です。
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主入口となる右側の玄関庇。上部の破風と角度を合わせた分厚い三角屋根を乗せます。
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鋭角に組まれた三角屋根が建物中央に聳え立ちます。学校建築に良くある手法なので、当初この建物を見たときには旧校舎を転用したものかとも思いましたが、最初から役場庁舎として建てられたものでした。確かに、全体の雰囲気は築年も近いこちらの学校建築に似通っています。
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隣接して並ぶ別棟。モルタル造のこの棟は後年の増築と思われます。
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こちらは本館正面の見上げ。中間部にドイツ壁を用いています。
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by sunshine-works | 2012-04-10 22:27 | 近代建築 岡山県 | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 06日
旧小川村役場
丹波の近代建築その6

丹波市の南部、旧山南町小川地区に資料館として使われていた古い役場建物が建っています。この建物は昭和30年に周辺町村と合併して山南町になるまで旧小川村役場として使われていたものです。築年は不明ですが、大正期のものと思われます。
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木造平屋建て、下見板貼、外壁上部をモルタル壁とし、寄棟屋根を葺きます。中央に折れ屋根の庇を持つ車寄せを構えますが、この部分以外には殆ど装飾要素を持たず、当時の地方村役場には珍しいモダンで垢抜けた造りとなっています。
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シンプルな意匠のこの建物に彩りを添える玄関部分。
庇の上には小さな棟飾りが乗せられ、三角破風には旧小川村の章が飾られます。
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側面から
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この旧小川村役場は資料館に改装する際にきちんと補修され、このような良好な状態が保たれていますが、地方に現存する役場建物には劣化老朽が進んで存続が危ういものが少なくありません。
資料館としての役目を終えたこの建物が今後どうなっていくのか気になる処です。
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by sunshine-works | 2012-04-06 20:40 | 近代建築 兵庫県 | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 02日
旧柏原町役場
丹波の近代建築その5

柏原の中心部に木造2階建ての古い庁舎が建っています。現在は丹波市役所柏原支所として使われているこの建物は、丹波市の基となった6町村の一つ、旧柏原町の町役場として建てられました。昭和10年築。設計:内籐克雄
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木造2階建、下見板貼、中央に車寄せを配し、建物両翼を一段前に張り出します。
両翼上部の折れ屋根、中央屋根を飾るドーマー窓や鴟尾、アーチを描く玄関ポーチの意匠、均等に並べられた上げ下げ窓等々、ルネサンス様式を基調とした当時の庁舎建築の姿を伝えます。
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設計者の内籐克雄は兵庫県技師を経て、出身地の小野市に設計事務所を構えました。学校や庁舎等の公共建築を得意とし、県の内陸部を中心に多くの作品を残しています。
*詳細はこちら
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三方にアーチを配したコンクリート造の車寄せ。庇はフラットでシンプルな造りです。
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近年に改修が施され、70年を超える建物にしては極めて良好に保たれています。部材の張替えや交換をしていると思われますが、原形を損なうことなく処理されています。
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複雑な形状の側面。この部分は後年に増築されていると思われます。
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遠方からの眺望。
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館内も当時の姿が良好に残されています。
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代々織田家の領下だった柏原の町は、今も武家町の面影を留めます。
柏原のシンボルとも言えるこの庁舎は、違和感無く古い町並みに溶け込んでいます。
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by sunshine-works | 2012-04-02 22:08 | 近代建築 兵庫県 | Trackback | Comments(0)