2008年 02月 16日
旧ニューヨークナショナルシティ銀行神戸支店(旧居留地38番館)
神戸中央区の近代建築その25

旧居留地の元町駅寄りに大丸百貨店神戸店が建っています。本館は近年に建て替えられましたが、隣接するこの別館は元々は昭和4年にニューヨークナショナルシティ銀行神戸支店として建てられたものです。
設計:W.Mヴォーリズ
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戦前に日本に進出していた海外銀行の中で唯一のアメリカ系銀行がこのニューヨークナショナルシティ銀行です。(他にも数行ありましたが統合や撤退により消滅しています)
積極的に海外進出を果たした同行は日本国内に東京、大阪、横浜、神戸の4支店を有し、外国系銀行中最大の規模を誇っていました。
昭和4年に建てられたこの神戸支店は旧インターナショナル銀行の日本国内店舗を承継した同行が竣工させたものです。
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大正期から昭和初期に流行したアメリカンルネッサンス様式のデザインです。前面に並ぶ4本のイオニア式オーダーや目地の大きな壁面の貼石、入口上部のペディメント飾り等、ニューヨークやシカゴに建てられたオフィスビルを彷彿させます。同時期に建てられた同じく外資銀行であるチャータード銀行神戸支店も同じ様式に分類されますが、石材の素材感が違う事で印象も随分変わって見えます。
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昭和4年に新築された神戸支店ですが、米国資本の同行は日米関係の険悪化に伴って徐々に業務が制限されていきます。日米開戦の年である昭和16年には閉鎖となってしまい、銀行として使われたのは築後僅か10年足らずの短い期間に終わりました。
戦後も同行の店舗に復される事は無く、しばらく倉庫として使われていましたが、やがて隣の大丸百貨店の別館として再生される事となり現在に至っています。
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エントランスは南面と東面にそれぞれ設けられています。メイン入口の南側エントランス。
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重厚な玄関扉
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東面の入口
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東面に並ぶ窓。窓枠は当時のままのようです。
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こちらは西面の窓
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大丸の別館としてはこの建物の西に二つの大正時代の建物が存在していました。この二つの建物は取り壊されてしまいましたが、外壁のみ残されています。*かっての独逸染料合名会社と帝国酸素株式会社の社屋だったとの記録があります。
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内側の景色。
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このような建物が商業施設として再利用される例は数多く見受けられます。天井が高く開放感がある事や豪華な石を使った内装は商業空間として申し分の無い環境と言えます。神戸大丸は他にも大阪商船ビルの1階をインテリア売場として使用していたり、この建物の隣にあった別館を壁面保存し景観を守ったりと、古い建物の再利用に積極的な姿勢を示しています。街全体で演出効果を高めて行く同社の手法はさすが一流企業だけのことはあります。
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by sunshine-works | 2008-02-16 19:11 | 近代建築 兵庫県 | Trackback | Comments(2)
Commented by rara380 at 2008-02-17 17:00
色合いが好きです。 多少中華風に見えるドアですが、塗りなおしもありですよね。なにかもったいないような気がしました。
Commented by sunshine-works at 2008-02-18 23:22
こんばんは。本当に良い色合いですよね。時代を経てきた重みを感じます。ドアの塗装については何とも判りませんが地の色ではないかもしれません。


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