2008年 02月 12日
神戸中央区の近代建築その24 旧居留地の北端、三宮に程近い浪花町の一角に大きく弧を描く印象的な建物が建っています。この建物は昭和9年に渡辺節の設計で建てられた旧神戸証券取引所の外観部分を再生利用した物です。(平成6年改修) 神戸証券取引所は東京、大阪に次ぐ全国3番目の証券市場として明治16年に創設されています。地域的には大阪に近接している神戸ですが、昭和42年に廃止されるまで独自に証券取引所が置かれていました。国際貿易港として発展を遂げた神戸とは言え、証券市場は東証や大証に比べて小規模な物でした。しかし、この取引所は東京や大阪の証券取引所を凌ぐ程大きくかつ豪華な建物に思えます。竣工した当時の神戸経済界には相応の勢いや先行き期待があったのかも知れません。 昭和9年に建てられたこの建物ですが僅か10年程で取引所としての使命を終えてしまいます。昭和20年の終戦と同時に進駐軍に接収され、昭和28年に返還された後は映画館として使用される事となります(証券取引所は近くの別の建物で再開されていました)。その後再開発によって高層オフィスビルに建替えられる事となったのですが、元の建物を低層部として残し、内側に高層棟を組み込む形で保存される事となりました。海岸ビルの再建と同じような手法ですが年代的にはこちらが先になります。 低層部として保存された旧建物は扇型に広がる前面部分がL型に組み合った基部に繋がった形で構成されています。現在の前面部分は角柱がオブジェの様に並んでいますが、かってはこの柱の間に外壁が廻らされていました。後方部分は当時の建物をそのまま活かして商業棟として使用されています。 側面に設けられている玄関 玄関部分の内側 海岸ビルに比べると新旧建物の取り合わせに違和感が少なく自然な感じがします。低層部の面積が大きくデザインも特徴的な為に高層棟とのコントラストが際立って別個の建物の様に見えるのが一因でしょうか。高層棟がかなりセットバックしているので下から見上げた時にも然程気になりません。 旧建物を残して建替える場合はオリジナルの形を残して再生する手法が常道なのでしょうが、この建物は思い切って印象的な部分(列柱)だけを利用した例です。建物保存の趣旨からは全体保存が望ましいとは思いますが、特徴的な部分を抜き出した事でより印象が強く出て面白い効果となっています。
by sunshine-works
| 2008-02-12 21:18
| 近代建築 兵庫県
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