2008年 01月 17日
旧大阪商船神戸支店(商船三井ビル)
神戸中央区の近代建築その17

海岸通りのほぼ真ん中に建つ優美な姿のこのビルは旧大阪商船神戸支店として大正11年に建てられました。設計は関西の名建築を数多く手がけた渡辺節です。
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海岸通りに並ぶ近代建築の中でも一際目を惹く建物です。当時アメリカで流行していたアメリカンルネッサンススタイルを取り入れ、重厚な様式美と洗練された合理性を併せ持つ美しい姿形となっています。曲線と直線が織り成す流麗なフォルムに魅了されます。
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大阪商船は現在は商船三井の名が知られている為に三井財閥系の印象が強いのですが、住友系の大阪商船と三井物産の船舶部門が戦後に統合して出来た会社が大阪商船三井船舶です。戦前の大阪商船は東の日本郵船(三菱財閥の基幹会社)に対する西の大阪商船として日本の海運業界を2分していました。
関西を基盤とした大阪商船だけにこの建物は支社とは思えない豪奢な社屋となっています。
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1階外壁はルスティカ積みと呼ばれる手法で大きな石を積み上げています。あえて粗い岩を使い石の素材感を活かした仕上げとしています。
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この建物も神港ビルヂングに劣らず大きな建物です。随所に施されたメダリオンやテラコッタの装飾、バランス良く整えられた各階の窓の配列は大きな壁面空間を効果的に彩り、単調さを感じさせません。
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入口は数箇所設けられています。現在塞がれている南西角の入口はかっての主玄関だったと思われます。
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こちらは西面の入口
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北側にも入口があります。
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北側の玄関内部
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おそらく当時から使われていると思われるエレベーター。
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増築・改築を加えられることなく、今もほぼ竣工時の姿のまま現役で使用されています。当時としては高層の7階建ての建物に最新のエレベータや暖房設備を採用し、今日のオフィスビルの概要をほぼ備えた近代オフィスの奔りとも言える建物です。
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海岸通りのシンボルであるこの建物は大正期の事務所ビルの傑作として、また設計者の渡辺節の名を高めた代表作として神戸の誇る歴史遺産・文化遺産です。大正期に建てられたオフィスビルの多くが失われていく中、日本の建築史を語る上でも欠かせない貴重な存在となっています。
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by sunshine-works | 2008-01-17 21:38 | 近代建築 兵庫県 | Trackback | Comments(11)
Commented by ひろ009 at 2008-01-18 23:52 x
この建物は大好きです。私にとっては、この界隈の近代建築の中では新港貿易会館と並んで双璧かもしれません。写真がこれまた素晴らしいですね。高い位置から撮ったアングルはとても新鮮です。
Commented by kentiku100 at 2008-01-19 11:24 x
あまり過度な装飾をしてある建築は嫌いなのですが、この建物は装飾と機能とのバランスが絶妙で独特の風格がありますね。
西面入口の粗い石のレリーフと軽い赤いテントの対比もきれいですね。
Commented by sunshine-works at 2008-01-19 17:11
ひろ009さん、コメントありがとうございます。この建物は私も大好きです。凛とした風情に痺れますよね。高所からのショットは向かいの海岸ビルから撮ったものです(ここは自由に入れます)。普段とはちょっと変わった画角で写真が撮れました。ビルが目前に見えて迫力たっぷりのおすすめスポットです。

Commented by sunshine-works at 2008-01-19 17:22
kentiku100さん、こんにちは。しっかり飾る所は飾っていますが暑苦しくなっていないのが良いですね。正装した麗人と言った雰囲気でしょうか。
Commented by rara380 at 2008-01-20 19:53
なんともすばらしい建物ですね。全てにおいて完璧と思います。
僕はこのような建築の場合、外壁の目地にも注目します。
函館要塞を調べている関係上、どうしても目地が気になります。
やはり目地がしっかりしている建物は外壁部の欠損等が少なく
結果、耐久性にすぐれてると思います。 当時の職人の技術の高さがうかがえる建物ですね。
Commented by sunshine-works at 2008-01-21 19:44
RARA380さんこんばんは。なるほどそのような見方があるのですね。石は非常に精妙に組まれています。当初の施工精度が高かったのに加えて保守をきっちり行なっているからかも知れません。三井が管理する建物に大丸がテナントとして入居しているのですからその辺は抜かりないとは思います。
Commented by 新之介 at 2009-03-09 08:36 x
はじめまして
とてもすばらしいビルですね。
解体の時期が迫ってきた大阪のダイビルと
同時期に建てられたこのビルとは
兄弟ビルのように感じました。

リンクさせていただきました。


Commented by sunshine-works at 2009-03-09 18:55
新之助様はじめまして。
ダイビルとこの大阪商船ビルは渡辺節の、と言うよりもこの時代の日本を代表する近代ビルの双璧でしょうね。ダイビルの取壊し計画が進捗しているようですが、解体されなくてはならない理由がわかりません。大阪にはこれ以上新しいビルは必要ないと思います。
ダイビルの写真を拝見しました。このすばらしい建物が失われてしまうなんて本当に残念です。
Commented by wannwan at 2009-07-04 02:41 x
はじめまして
僕もこの建物好きです。
この頃の建築って、簡素な現代建築にはない温かさがありますよね

今度見学に行こうと思っているのですが、内部の見学はできないんでしょうか?
Commented by sunshine-works at 2009-07-04 15:56
wannwanさんこんにちは。
この建物の1階は大丸のインテリア売場として使用されていますので誰でも入る事は出来ます。但し、商業テナントの多くは店内撮影禁止としている所が多いので許可を得た方が良いかも知れません。
上階は事務所区画なので原則部外者禁止です。来訪者を装って共用部へ入館は出来ますが写真撮影は難しいかも知れません。
Commented by wannwan at 2009-07-04 17:49 x
返信ありがとうございます

一階だけでも明日行ってみることにします♪


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