2007年 12月 05日
旧国立生糸検査所
神戸中央区の近代建築その9

前回紹介した神戸市立生糸検査所の隣にはもう一棟の生糸検査所が並んでいます。この建物は昭和7年、置塩章の設計によって建てられました。
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神戸の生糸検査は昭和2年に建てられた神戸市立生糸検査所で行なわれていたのですが、昭和6年に施設ごと国に移管されます。西日本の生糸生産の増大もあって旧施設が手狭になった事からその翌年に別館として建てられたのがこの建物です。
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神戸市営繕課と兵庫県営繕課それぞれをほぼ同時期に課長として率いた清水栄二と置塩章の作品が並んで建っています。どちらもゴシックを基本としていますが比べてみると二人の作風の違いが良く現れていて興味をそそります。
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兵庫県以外にも多くの公共建築を残した置塩章らしい風格のある意匠です。スクラッチタイルが重厚な雰囲気に良く似合います。
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本来中央に配置される事の多い塔屋が建物東端に設けられています。建物の顔に当たる部分なのですが主導線の国道から遠く離れ、倉庫街や貨物駅を結んだ街路に面しています。
庁舎と言えども検査所と言う性格上、用途を優先した設計がなされた為でしょうか。この建物に沿って鉄道の引込線が敷かれていましたので荷役の便を考慮した結果かもしれません。
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東西方向に長い建物ですが、塔屋を基点に南北方向にも建物が伸びています(L字方となっています)。正面側から見ると東に寄った塔屋はバランスが悪いように見えますが、南東から見ると非常に納まりよく映ります。
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数箇所設けられた入口扉。物品の搬入に使われたものと思われます。
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隣の旧市立生糸検査所もそうですが、4階建てにしてはボリューム感のある建物です。ほぼ同じ高さで一列に並ぶこの生糸検査所と隣の税関の脇を抜けて埠頭へ続く臨港線をいくつもの貨車を連ねた列車が走る様は壮観な眺めだったと思います。
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神戸港の生糸輸出は関東大震災後から昭和初年が最盛期でその後は戦時体制によって激減して行きます。戦後は更に化学繊維の発達や需要の変化により衰退の一途を辿ります。この建物も生糸検査所の役割を離れ、その後は農水省の施設として使用されてきました。
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現在この建物の売却が報じられていますが、この建物は神戸港が大きく飛躍する事となった時代の象徴であり、建築資料としても価値の高いものと言われています。
新港地区の景観はこの建物と神戸税関や周辺の建物・倉庫群が一体となって構成されているもので、どの建物も欠くことの出来ない存在となっています。 
震災で被害を受けた神戸税関は外観を損ねることなく元の姿に修復されました。他の神戸の歴史的建造物の多くも必死の努力で震災の傷を修復し復元を図りました。いままで重ねてきたこのような苦労が虚しいものとならないことを祈るばかりです。
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by sunshine-works | 2007-12-05 20:30 | 近代建築 | Trackback | Comments(2)
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Commented by rara380 at 2007-12-08 18:02
初めて訪問させて頂きました。
我が国の建造物は、古くなれば取り壊し新たに立て直す。 この方程式がいつのまに定着してしまっていて、西洋の町並みのような風景を見ることが出来ませんね。  レンガ造りの建物は古くなってこそ味がある。

また、ご紹介下さった旧国立生糸検査所の外壁の色合いが実にいい。
加えて、正門の石材とレンガ部のつなぎ目に違和感がまったくない。
他のお写真も拝見させて頂きましたが、どれも素敵です。
旧関西学院チャペルのレンガ造りでは、我が故郷の函館トラピスト女子修道院を思わせる感じがしました。
Commented by sunshine-works at 2007-12-09 01:02
コメントありがとうございます。仰るとおりこの建物は時代を経た風格がなんともいえない良い味を出しています。最新の建築技法をもってしてもこの雰囲気は表せないでしょう。このような歴史の証人のような建物を残していく事は単なるノスタルジアだけでなく文化を継承していく我々の義務の様にも思います。
函館要塞については初めて知りました。古くから開かれた街なので古い建造物が多く残っているのは知っていましたがこのような歴史遺産が状態良く残っているとは。続きを楽しみにしています。


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