2007年 11月 14日
神戸中央区の近代建築その4 神戸は港湾都市のイメージが強いのですが、実際には市街地のすぐ裏手まで六甲山系の山並みが迫る山地面積の比率が高い都市です。最高点の標高930米は政令指定都市としてはかなり高い部類になります。また日本三古湯の一つ有馬温泉も市内に位置しており温泉観光地を有する数少ない政令都市でもあります。 神戸港の開港により発展して行った神戸は急峻な山裾に築かれた都市であるために河川水に恵まれず当初は上水を地下水や湧水に頼っていました。やがて増大する人口に対応するために後背の山地にダムを造る事となり、布引・千刈・烏原の水道用ダムが明治~大正期に相次いで建設されていきます。今回はこれら3つのダムの中で最初に作られ日本初の重力式コンクリートダムとなった布引ダムを紹介します。 英国人ウィリアム・バルトンが基本構想を作り、佐野藤次郎が主任設計者となりました。100年以上前の築ですが補修工事を加えて今も現役施設として使われています。竣工明治33年。 三ノ宮から約2キロ強、すぐそこの裏山といった距離なのですが周辺は緑濃い奥山の風景です。市街地の近くにこれだけの規模のダムが造られていることに驚きます。近辺には有名な布引の滝や渓谷もあって手軽なハイキングコースとなっています。 重力式コンクリートダムと呼ばれる形式で堤体の自重で水圧を支える構造となっています。石で基礎を組みその上をコンクリートで固めて表面には石を貼っています。 このダムの竣工に際しては相当な苦労があった様です。資材の運搬もほとんど人力に頼らざるを得ない状況の中、しかも始めての近代ダムの工事とあって当事の兵庫県にとって大プロジェクトとなりました。 工事の詳細はこちらに参考記事があります。 建築物と違って装飾意匠はほとんどありませんが景観と一体になったダイナミックな構造美は土木建造物ならではのものです。 聳え立つ荒々しい岩肌は山城の城壁を思わせます。 堰堤の頂部です。このダムは水面位置にゲートが無いタイプです。 ダムに向かう途中にも当事建てられた施設が残っています。 日本の近代水道は横浜市に始まり神戸市は全国で7番目となります。幕末に開港した他の港湾都市、長崎と函館が2番目3番目であり急峻な斜面に作られた人工都市がいずれも水利面に苦慮し近代水道の必要に迫られていたことが伺えます。 神戸市は佐野藤次郎が中心となって築いた3つのダムを水源とした水道網により近代都市の基盤を備えます。今日我々が目にする美しい神戸の街並みや建物はこのプロジェクトの成功によって実現されたものとも言えます。
by sunshine-works
| 2007-11-14 19:58
| 近代建築 兵庫県
|
Trackback
|
Comments(2)
こんにちは。学生時代は山歩きをしていたので六甲にもよく登ったのですが、布引ダムは(きちんと)見たことがありません。現役というのが素晴らしいですし、このような近代化遺産(現役なので遺産じゃないか)は考え抜かれた構造美+造形美が最高ですね。「水辺の土木」(書籍&INAXギャラリー展)を思い出しました。また、子供たちと一緒にハイキングを兼ねて見に行きたいと思います。
0
Commented
by
sunshine-works at 2007-11-17 23:07
こんばんは。コメントありがとうございます。
このようなスケールの大きな建造物は写真だけでは表現しきれない迫力があります。機会があればぜひ実物を見られることをおすすめします。ここは手軽に(ロープウエイを使えばいとも簡単にたどり着けます)行ける割には奥深い山の雰囲気が味わえます。周辺は紅葉の名所との事なのでそろそろ見ごろかも知れませんね。 |
アバウト
カレンダー
カテゴリ
タグ
鉄道施設(189)
橋梁・隧道(184) 学校建築(146) 京都市(105) 住宅(99) 庁舎(92) 島根県(76) 広島県安芸地区(74) 愛媛県(73) 香川県(66) 神戸市中央区(66) 岡山県備中地区(65) 銀行(63) 岡山県備前地区(59) 兵庫県阪神地区(59) 事務所ビル(58) 兵庫県播磨地区(57) 京都府丹後・丹波地区(55) 兵庫県丹波・但馬地区(53) 軍事施設(50) 以前の記事
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||