2012年 12月 06日
神子畑選鉱場跡
朝来の近代建築その8

前回は生野から移築され、神子畑選鉱場の施設として使われた旧ムーセ邸を紹介しましたが、この神子畑の地にはかつて中世に遡る歴史を持つ鉱山が開かれていました。
この神子畑鉱山は明治初期に近代鉱山として再開発されますが、同じ鉱脈で繋がる明延や生野に比してその鉱床の規模は少さく、大正後期には鉱脈の枯渇によって閉山となってしまいます。
以降この地には約5キロ北西に位置する明延鉱山の選鉱場が置かれる事となり、60年以上に亘って稼働を続ける中で山肌一面に巨大な選鉱施設が築かれていきます。
朝来の近代建築巡りの続きは、前回に引き続き鉱業遺産の一つとして残る神子畑選鉱場跡を紹介します。
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選鉱場の事務所施設として使われた旧ムーセ邸の背後、加盛山の南斜面を巨大なコンクリートの構造物が覆います。
昭和62年の明延鉱山の閉山から20年余、この敷地内には長らく閉山当時のままの建屋が廃墟と化した状態で放置されていました。
これらの殆どは、ようやく最近になって取り除かれ、現在はコンクリートや石で築かれた建物の基礎部分、幾つかの構造物、そして鉱石や資材を運ぶ為に使われた運搬軌道の跡が僅かに残されています。
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山の斜面に沿って建屋の基礎部分が階段状に積み上がります。22段に及ぶこの基礎の上に木造や鉄骨で建てられた様々な施設の建屋が立ち並んでいました。
幅110メートル、高低差75メートルの斜面一面は選鉱や鉱石の粉砕を行う主要施設の他に、電力施設、水道設備、鉄工所、木工所、インクラインの管制施設、鉱石の積み下ろし場、事務所、従業員の福利施設他、種々様々な施設で埋め尽くされ、その景観は山間に忽然と現れた人工都市を思わせるものがありました。
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敷地の最下段、地平に据えられたコンクリート製の巨大な構造物。
これは選鉱作業の最終段階に使われたシックナーと呼ばれる施設で、水に混ざった微細な鉱石を沈殿作用によって取り出すためのものです。
殆どの構造物が取り除かれた神子畑選鉱場に於いて当時のまま原型を保つ数少ない遺構となります。
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高低差のある施設内へ物資を搬送する為、斜面にはインクライン(鋼索軌道)が設置されていました。現在は急斜面を登る錆付いたレールのみが残されています。
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明延鉱山との物資輸送には、専用のトロッコ列車、明延鉱山鉄道(明神電車)が敷かれていました。1円電車と呼ばれて沿線住民の足としても使われたこの軌道も閉山と共に廃止されます。
敷地内には当時使われていたトロッコ列車が復元展示されています。
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明治期以降の日本各地の主要な鉱山には、この神子畑選鉱場と同様に山肌を覆い尽くす規模の鉱山施設が続々と建てられて行きました。
これらの鉱山の殆どは昭和末期から平成初期に閉山を余儀なくされ、その多くは今も往時の姿を留めた状態で残されています。
この神子畑選鉱場施設は、隆盛を極めた往時の日本の鉱業技術を偲ぶ産業遺産として貴重な資料として残ります。
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by sunshine-works | 2012-12-06 21:05 | 近代建築 兵庫県 | Trackback(1) | Comments(0)
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