2012年 11月 22日
香川県坂出市の近代建築その10 岡山県倉敷市と香川県坂出市を結ぶ瀬戸大橋は、塩飽諸島の大小5つの島に跨って桁が架けられています。 この5島の一つ、最も坂出側に位置する与島の隣に並ぶ鍋島には、明治5年に点灯された石造灯台が現役施設として稼働しています。 イギリス人技師ブラントンが手掛けた一連の灯台の一つとなるこの鍋島灯台は、四国で最も古い歴史を持つ灯台です。 明治元年から8年間の間に、北海道から九州までの全国各地に26の灯台を築いたブラントンの初期の作品となります。この26灯台は、規模や構造によって幾つかの類型に分けられますが、最も多くを占めるのがこの鍋島灯台に見られる形式のものです。 この形式の灯台は、ブラントンが日本で最初に手掛けた 樫野埼灯台や淡路島の江崎灯台を始め、高さ10~20メートルまでの中規模灯台に多く用いられました。 与島から防波堤によって繋がる鍋島の小高い丘の上に、南東に向いて建てられています。灯台自体の高さは約10メートル、海面から30メートルの灯高を確保します。 灯塔が据えられる1階付属室部分は円筒を半分に切った独特の形状。ブラントンの石造灯台の多くにこの特徴が受け継がれています。風や波飛沫を受ける正面側を円形として強度を確保する為の工夫と思われます。 コンクリートが普及する以前の明治初期、灯台には様々な素材が用いられていましたが、この鍋島灯台は付属建物(これらの施設はその後四国村へ移されています)を含めて全て地元産の花崗岩を積んで建てられました。 近辺に多くの石材産地が控え、優れた石工を擁していた当地の利を活かしたこの石造灯台は、140年を経た今も当時の姿を保ちます。 狭い螺旋階段を上って灯室内部へ。普段は立入禁止ですが、年に数回の公開日が設けられています。 明治期に建てられ、今尚使われている灯台は全国に67基。鍋島灯台は7番目に古いものとなります。 これら黎明期の現存灯台は、近代国家の要件として欠かせない通商の安全確保に、明治政府が国家の威信をかけて臨んだ灯台事業の概要を知る資料として、極めて価値の高いものと言えます。
by sunshine-works
| 2012-11-22 22:13
| 近代建築 香川県
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