2012年 10月 13日
倉敷中央病院
岡山県倉敷市の近代建築その6

倉敷教会の東方へ約300メートル、赤い屋根が印象的な総合病院の建物群が見えます。この倉敷中央病院には、前身となった倉紡中央病院時代に建てられた病院施設が現存します。これらの建物は大正12年の開業時に建てられました。
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倉敷紡績の企業城下町として発展した倉敷には、社員の厚生施設として様々な組織、施設が建てられます。倉敷紡績も、この時代の大くの大会社の例に漏れず地域一番の規模となるこの近代的な総合病院を設立します。
設計は倉敷紡績社長大原孫三郎との繋がりで倉敷に多くの作品を残した薬師寺主計、施工も大原孫三郎や薬師寺主計と所縁の深い藤木工務店が担当しています。
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現存する倉紡中央病院時代の建物は全部で3棟。
南から順に旧看護婦養成所、旧事務棟、旧外来棟が敷地の西側の道路に面して並びます。
現在の主要な病院施設は背後に建てられた鉄筋コンクリート造の近代病棟が担っていますが、これらの建物も用途を変えて現役施設として使われています。
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敷地の南端に建つ3階建ての建物。かつて看護婦養成所として建てられ、現在は倉敷中央看護専門学校として使われています。
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鉄筋コンクリート3階建て。
直線と平面を基調とした外観、装飾意匠を最小限に止め、均等に並ぶ縦長窓の配置で垂直・水平方向のラインを強調します。
反面、1階の腰周りには煉瓦タイルを飾り、玄関ポーチにはアーチが組まれる等、古典様式からモダニズム様式へ移行する過渡期の建築様式が見て取れます。
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旧事務棟として使われていた建物。現在はリハビリ施設となっています。竣工時は、この建物の入口が病院の主玄関になっていました。
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旧外来棟。事務棟と意匠を合わせた造りです。現在は幼稚園として使われています。
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旧事務棟と旧外来棟の意匠はゼセッションやアールヌーボの様式を取り入れた薬師寺主計が得意とするスタイル。当時の病院建築にはこの様式が数多く使われています。
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83床、医師24名の規模で開業した倉紡中央病院は、翌年には200床を超える大きな総合病院に発展、京都大学から多くの医師を招き、海外の最新医療機材を導入する等、県内では岡山医科大学と並ぶ先端の医療機関となりました。
また、この倉紡中央病院は、東洋一の病院を目指した大原孫三郎の理念が様々に体現され、斬新な施設や制度が導入されていました。*詳細はこちらをご覧ください。
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この病院が建てられた当時の倉敷の人口は1万5千人程。人口規模と比較すると相当に大きく立派な病院だった様です。
広く市民にも開放されていたこの倉紡病院は、従業員や地域に対する利益還元や社会貢献を重視した大原孫三郎の哲学を示す象徴の一つとなっています。
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by sunshine-works | 2012-10-13 14:12 | 近代建築 岡山県 | Trackback | Comments(2)
Commented by MIKA at 2019-12-08 23:24 x
今日行ってきました。大正12年築なのですか!😳思っていたのよりももっと古いんですね。私は真ん中の建物の玄関の階段と両側の照明の意匠に萌えました。この三棟並んだ建物の後ろにも古そうな建物が見えました。
Commented by sunshine-works at 2019-12-10 11:17
> MIKAさん
コメントありがとう御座います。このような古い建物を大切に残している事は、この病院の創設時の理念が継承されている表れと思います。倉敷に残る古い建物の中では目立たない建物ですが、造形の美しい建物です。


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