2012年 09月 19日
香川県坂出市の近代建築その7 坂出駅から線路沿いに西へ程なく、市街地の一角に置かれた緑地公園の隣に大正期に建てられた旧図書館が残されています。現在は郷土資料館として使われているこの建物は坂出の実業家鎌田勝太郎が設立した鎌田共済会の私設図書館として大正11年に建てられました。設計・施工:竹中工務店。 坂出で醤油醸造と酒造を営む鎌田家の長男勝太郎は、家督を継いだ後に製塩業に進出。塩田勃興の中心的な役割を果たし、坂出を日本有数の製塩地帯へと発展させます。 塩田事業で大きな成功を収め、その後政界へ進出を果たした勝太郎は、地元文化振興を目的として私財を供して財団法人鎌田共済会を設立、その拠点として建てられたのがこの建物です。 坂出市内に現存する大正期の建物としては数少ない本格的な鉄筋コンクリート建物です。 直線・平面で構成されるシンプルな外観ですが、整然と並ぶ2階のアーチ窓やその上に立ち上がるパラペットに現される様式美に、当時最新の流行を取り入れた優れた建築意匠が見て取れます。 中央に据えられた車寄せ。太い柱で分厚い庇を支えます。 人造石を貼った玄関周り。玄関扉は建物の規模に比べると小ぶりな印象です。 鎌田共済会図書館は、戦前の私設図書館の中でも全国有数の規模を誇る存在として知られていました。 その後、この建物は坂出市立図書館として長きに亘って使われましたが、新図書館の竣工に伴って再び鎌田共済会に所有が移され、現在は郷土資料館として使われています。 建物左手にはもう一つ小さな入口があります。 全国に残る戦前築の図書館の遺構の中でも、意匠性に優れ、規模も大きなこの建物は、地方に於ける図書館建築の良例として貴重です。 隆盛を極めた当時の坂出の賑わいを今に伝える存在として、歴史資料としても重要な建物と思えます。
by sunshine-works
| 2012-09-19 23:57
| 近代建築 香川県
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