2012年 07月 26日
仁風閣
鳥取県鳥取市の近代建築その7

鳥取城址に広がる久松公園の一角に、西日本を代表する洋風建築が残されています。
明治40年、旧鳥取藩主池田仲博公爵の別邸として建てられ、時の皇太子(後の大正天皇)の山陰行啓に際しては宿泊所として使用されました。
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広大な敷地に建つ白亜の巨大な木造2階建ての建物です。
設計を手掛けたのは、3つの国立博物館や東宮御所の設計で知られ、明治期の日本の近代建築界を代表する片山東熊工学博士。皇室関連施設の設計に数多く携わり、宮廷建築家と称された片山東熊ならではのルネッサンス様式の本格的な洋館建築です。
*各部の意匠や内装についての解説はこちらを参照下さい。
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池田家の別邸として建てられたとされていますが、これ程巨大な邸宅の起工から完成まで要した期間は僅か8ヶ月、むしろ皇太子の行啓に併せて急遽建てられたものとも思えます。
因みに鳥取初の電灯が灯されたのがこの仁風閣で、道路や町並みも急速に整備される等、皇太子行啓に併せて近代化が進められました。
仁風閣の建設費用だけでも当時の鳥取市の年間予算に等しく、市内のインフラ設備や街区整備を合わせるとその額は更に莫大なものとなりました。
この皇太子行啓は鳥取市の威信を掛けた大イベントだったと思われます。
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鳥取城の堀を挟んだ遠方から側面を眺めます。
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建物側面から反対側へ廻ります。側面に添えられた八角形の張出部分は階段室になっており、内部には螺旋階段が据えられています。
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建物南面です。小さな池を配した庭に面してバルコニーが設けられています。
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館内は一部区画を除いて見学自由。1階から見て行きます。
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どの部屋も建具や調度品の多くは当時の状態で保たれています。
壁紙や床張り、天井等の内装材は後年に張り替えていますが、当初の物に準拠した仕様としています。
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裏庭に面したテラス部分です。
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先程外観を眺めた螺旋階段部分。階段は支柱を持たず、一繋がりになった構造自身で支えられます。
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残念ながら、この階段は使用禁止。別の階段で2階へ上がります。
2階の各部屋です。
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先程のテラスの2階部分。こちらはガラス窓で塞がれた閉鎖式バルコニーです。
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当時の東京や京都の西洋建築を凌ぐ建築意匠、贅を凝らした内外装、城跡や背後の山並みを借景とする素晴らしい景観等々、西日本の邸宅として随一ともいえるこの仁風閣ですが、皇太子の御座所となったのは僅かに数日、その後池田家の別邸として使われた期間も短く、建物の歴史の殆どは、公会堂や科学博物館等の公共の用途に使われました。
昭和47年に県から払い下げを受け、修復、復元を行った後の昭和51年に公開施設として現在に至ります。
四季折々に様々な景色を見せる城跡に映えるこの美しい建物は、鳥取県の近代洋風住宅として唯一の重要文化財に指定されています。
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by sunshine-works | 2012-07-26 21:04 | 近代建築 鳥取県 | Trackback(1) | Comments(2)
Tracked from ローカルニュースの旅 at 2012-09-17 12:40
タイトル : 「仁風閣」舞台に撮影会 キヤノンフォトクラブ
キヤノン製カメラの愛好家らでつくる「キヤノンフォトクラブ」の中四国合同撮影会が15日、鳥取市で始まった。写真家の大山謙一郎さんを講師に迎え、初日は国重要文化財の「仁風閣」を舞台に、県東部に伝わる麒麟獅子舞などの撮影に臨み、それぞれの目線でシャッターを切っていた。... more
Commented by 太郎 at 2012-07-29 10:04 x
お久しぶりです。久々にまとめて拝見しております^^
すばらしい邸宅ですね・・・ゆったりと保存され恵まれた
環境にありますね!
Commented by sunshine-works at 2012-07-30 13:16
太郎さん こんにちは。
この建物は殆どの期間、県や市の手によって管理されて来ただけあって保存状況は万全と思えます。と、言うよりも、これだけの建物となると、個人や民間では到底維持出来ないでしょう。


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