2012年 06月 27日
旧鳥取県立図書館
鳥取県鳥取市の近代建築その5

鳥取市の中心市街の一角に、かつての鳥取県立図書館が残されています。現在は展示施設に利用されているこの建物は、昭和5年に置塩章の設計で建てられました。
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鉄筋コンクリート2階建て、公共施設らしく古典様式を基調とした建築意匠。この種の建物を得意とする置塩章ならではの手腕が存分に発揮されています。
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鳥取市の官庁街の近く、県都鳥取の中枢にあたるこの地に県の中央図書館として建てられました。この図書館が建てられた当時の鳥取市の人口は4万人に満たないものでしたが、同程度の地方都市の図書館の中では規模が大きく、豪奢な施設だったと思います。
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陸軍技官から兵庫県の営繕課長に転じた置塩章は、在任中の8年間に県内各地で数多くの公共建築を手掛けます。昭和3年に独立した後は活動範囲を全国に広げ、培った公共建築の設計技法を駆使して各地に優れた庁舎を残します。
この旧鳥取県立図書館は独立後に置塩章が手掛けた兵庫県外の公共建築として、宮崎・茨城県の両県庁舎と並ぶ数少ない現存例です。
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昭和5年から長く図書館として使われたこの建物は、老朽化により一時期取り壊しの計画が立てられましたが、保存活用を求める要望が尊重され、耐震補強を加えて外観部を保存する工事が行われました。
補修を終えた平成7年から現在の展示施設「わらべ館」として再活用されています。
この建物について「復元建物」や「外壁保存」と記している資料がありますが、建物躯体は当時の姿が保たれています。「旧建物の外郭を残し、後方に新造部分を繋いだ建物」とするのが正しい記述と思えます。
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屋上の塔屋部分。一連の置塩章の作品に共通するゴシック調の意匠で飾られています。
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鳥取城の大手前にあたるこの一角は、古くから文教地区として栄えました。現在も多くの文化施設が並ぶ中で、風格を湛えるこの建物はランドマークとして優れた景観を為しています。
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by sunshine-works | 2012-06-27 20:14 | 近代建築 鳥取県 | Trackback(1) | Comments(2)
Tracked from ローカルニュースの旅 at 2012-08-14 16:45
タイトル : オリジナル漫画完成 県立図書館で漫画家体験
鳥取県立図書館は5、12の両日、「プロに学ぶ!マンガ制作講座」を開いた。2日目の12日は、小学生から一般まで約20人が参加。それぞれが考えた漫画のストーリーにペン入れなどをしてオリジナル漫画を完成させ、漫画家のやりがいを体験した。... more
Commented by 瑠璃 at 2016-12-23 19:11 x
こちらを参考にさせてもらって見に行ってきました。なんだか新しい建物に感じてしまいました。
鳥取県の文化財ナビの五臓圓ビル(同じ市内にあります)の説明を読むと・昭和4年に着工した旧県立図書館に影響され、市内で4番目の鉄筋コンクリート造建築として建てられ、市内に現存する最古の鉄筋コンクリート造建築であると書いてます。
そうだとするとこのわらべ館は新しく建ったのものではと思いました?
「旧建物の外郭を残し、後方に新造部分を繋いだ建物」というのはどちらに書かれていたものなのか教えていただけますでしょうか?
よろしくお願いいたします。
Commented by sunshine-works at 2017-01-07 12:44
瑠璃さん、コメント有難う御座います。
ご指摘の件ですが、何らかの文献を参考にした記述ではありません。実際に建物を見て外壁の質感、風合いから察して外壁はレプリカでは無く、当時のものがそのまま保存されていると判断しました。屋上に上れば新造部分と繋いだ跡が確認出来ますし、館内にも旧壁面を支える構造材が加えられています。


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