2011年 12月 21日
香川県観音寺市の近代建築その1 観音寺市の北西、財田川沿いに開かれた名勝琴弾公園。この敷地の一角に観音寺市郷土資料館が置かれています。この建物は大正3年に旧三豊郡農会農事試験場として建てられたもので、その後は産業勧業館、市立博物館を経て昭和52年から現在の郷土資料館として使われています。 明治中期から近代農法の研究開発機関として全国各地に農事試験場が設立されていきます。香川県西部の中心だった旧観音寺町にも大正3年、この建物を本館とする県立農事試験場が設置されました。 農事試験場として使用されたのは10年程の短い期間でしたが、その後は各種の公共施設に転用される事となります。竣工から90年を超える今日も創建当時の木造2階建・漆喰壁に和瓦を噴いた寄棟屋根を載せる本館と、その背後に建つ木造平屋建の展示館が現存し、郷土資料の収蔵及び展示施設として使われています。 規模としては小さな造りですが、大正時代の庁舎・役場建物に相応しい格式や風格を備えた、地方における優れた公共建築の一例です。大きな改装もなく、竣工当時の姿を良好に留めています。 本館建物は完全な洋館建ではなく、骨組みに和風の小屋組を用い、屋根には和瓦を葺く等、伝統工法を基本にした和洋折衷のスタイルですが、セセッションの影響も感じさせるモダンな意匠となっています。中央に切妻屋根を持つ庇を大きく張り出し、建物上部には玄関庇に合わせた三角破風を設けます。 花崗岩の基礎の上に組んだ木桁で和風の庇を支える玄関ポーチ。 玄関の左右には縦長の大きな窓が並びます。 小さな石段を上って館内へ ほぼ当時の姿が保たれている館内。何度か用途が変更される度に改装を重ねましたが、現在は竣工時の姿に復されています。 2階の資料室に繋がる階段。 2階の窓からは裏手に並ぶ展示館の特徴的な越屋根を窺うことが出来ます。 本館の裏口。ここから裏手の展示館へ繋がります 渡り廊下で展示館へ移ります。 展示館内部。天井に設けられた明り取り用の窓から日差しが差し込みます。 各地に数多く建てられた農事試験場建物は現存例も多く、様々な時代の建築様式を見て取る事が出来ます。この旧三豊郡農会事務所も大正初期の地方公共建築の姿を今に伝える資料として貴重な建物と言えます。
by sunshine-works
| 2011-12-21 23:55
| 近代建築 香川県
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