2010年 08月 04日
川西の近代建築その1 阪急電鉄川西能勢口駅から能勢電鉄で北へ向かいます。郊外の景色の中を約20分、山下駅を降りた北側に、かつてこの地に栄えた多田鉱山の精錬所跡が郷土資料館として公開されています。 この敷地の一角に、市内から移築された一棟の洋風住宅が公開されています。この建物は、日本最初の工学博士で、創成期の繊維産業の発展に数々の功績を残した平賀義美(ひらがよしみ)博士の邸宅として建てられたものです。大正7年築。設計は大林組の松本禹象(まつもとうぞう)。 元々はこの場所から6キロ程南方、大阪寄りの猪名川の畔に建てられていました。敷地内にはこの建物の他に蔵や日本家屋も建っていたのですが、そちらは移築の時点ですでに撤去されており、洋館、研究室棟、庭に設けられた東屋が移築されています。 この建物は英国の田園住宅をモデルに設計されたものと言われています。平賀博士は幾度も海外に赴任していますが、留学先のイギリスで親しんだこの建築スタイルを好んで日本の自邸に採り入れた様です。この建物の由来や意匠的特徴についてはこちらを御覧下さい。素晴らしい解説記事があります。 外壁は小さな石を塗りこんだ洗い出しと呼ばれる独特の仕上げです。 建物の裏手に並ぶ研究室棟。洋館とは階段で連絡されています。 木造2階建てのこの建物ですが、非常に奥行きの小さい(薄い)形状をしています。 細部には手の込んだ装飾が見られます。 階段を介して洋館と繋がります。 当時のままに再現された館内。木材の質感が落ち着いた雰囲気を醸します。 窓の外に見えるのは平賀博士の胸像です。 1階には大きなサンルームが設けられています。 1階の奥から階段を上って研究室棟へ。 兵庫県内で明治以降戦前までの間に建てられた洋風住宅の多くはコロニアル様式やスパニッシュ様式が主流で、後期にセッセションの影響を受けた建築スタイルが一部に見られましたが、この英国田園住宅の様式は一般化しなかったようです。派手な装飾や重厚な佇まいはありませんが、素朴で温かみのある意匠は実用性にも優れ、郊外住宅として理想的とも思えるのですが、当時の好みには合わなかったと言うことでしょうか。
by sunshine-works
| 2010-08-04 23:28
| 近代建築 兵庫県
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Comments(7)
こんばんは。
ここは敷地が広く、伸びやかな佇まいですね。 私は小石混じりの洗い出しの外壁と玄関ホールや出窓上部の可愛らしいステンドグラスが印象的でした。 最初、和館の方を拝見したのですが、こちらも1時間近く見ていたかもです。
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sunshine-works at 2010-08-05 23:29
ひろ009さん こんばんは。
ここは歴史資料館なのですが、訪れる人も疎らで、撮影時はこの素晴らしい建物を殆ど貸切状態でした。ここまで存分に堪能できるスポットはそうは無いですよね。ついつい撮りすぎて写真が大量となってしまいました。
はじめまして。
よく見ておりますがコメントさせていただくのは初めてです。 川西にもいい建物あるんですね。テラッツォ洗出しの外壁が独特の質感で面白いです。 ところで対象の選び方といい写真の取り方といい、管理人様は建築の素人とは思えないのですが、何か関係あるお仕事されていらっしゃるのでしょうか。 ちなみに僕は近代建築史専攻の(今年退官された)某F先生の研究室の修了で、建築関係の仕事をしています。 ご不快なら返答は結構ですが。つい気になってしまいまして。
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sunshine-works at 2010-08-07 09:40
文京移民さん はじめまして。
ご質問についてですが、写真や建築とは全く無縁の仕事をしております。 どちらも、趣味としてまだまだ駆け出しですが、専門の方にその様に思われていたなら大変光栄な事と思います。 文京移民さんの美しい写真の数々を拝見致しました。素晴らしい内容ですね。いろいろと学ばせて頂ければと思います。
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sunshine-works at 2010-08-07 19:11
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