2010年 03月 03日
宝塚の近代建築その2 宝塚市西部、西宮市と接する静かな住宅街の一角、木立に囲まれた中に1棟の洋館が建っています。神戸の貿易商、土井内蔵氏の邸宅として昭和11年に建てられました。設計:川崎 忍 宝塚駅の北西へ徒歩約15分、住宅街の外れにひっそりと建つ木造2階建の建物です。 池を背後に控えた広い敷地には多くの木々が植えられ、周囲と隔たれた中に、程よく年期の入った建物が景色に溶け込んでいます。装飾性に富んだ豪奢な建物ではありませんが、この時代の洋風住宅らしく、質実な中に機能美と洗練を感じさせる意匠です。 東京の本郷中央教会や立教女学院学生会館等の設計者として知られる川崎忍は、この建物の当主土井内蔵と甥・叔父の関係にあります。カリフォルニア大学で建築を学んだ川崎忍の関西地区に残る唯一の作品と思われます。 土井内蔵氏の邸宅として建てられたこの建物は、その後女婿の松本安弘氏の居宅を経て宝塚市に寄贈されました。現在は市立図書館分室として非公開施設となっていますが、秋の公開日に限り一般見学が可能です。 建物に比べると小ぶりな玄関。庇両脇の持ち送りに特徴があります。 1階リビングルームです。 台所と浴室 階段を上がって2階の書斎へ 建物裏手に建つ石造の付属建物(倉庫?) 半地下式の元防空壕らしき物 この建物が建てられた昭和10年頃ともなると、個人住宅の意匠から「洋館」然とした仰々しさが薄れ、使い勝手に優れた洋風住宅が主流となっていきます。この旧土井邸はこの経過を示す好例として資料的価値の高い建物であり、近郊住宅地として感性豊かな文化を発展させていた、当時の宝塚の先進性を感じさせる建物でもあります。
by sunshine-works
| 2010-03-03 23:43
| 近代建築 兵庫県
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