2009年 10月 17日
岡山県岡山市の近代建築その2 1200年の歴史を持つ備前西大寺は、毎年2月に行われる西大寺会陽(裸祭り)で知られていますが、この門前には戦前の風景そのままの商店街が残されています。 岡山市の近代建築探訪の2回目は、木造の日本家屋にコンクリートやモルタルで洋風の意匠を施した、看板建築と呼ばれる建物が並ぶ西大寺五福通りの街並みを紹介します。 看板建築は関東大震災を教訓にして考案された簡易耐火建築ともいうべき工法です。道路に面した側の軒を取り去り、耐火素材の平坦な壁面に仕上げて火災発生時の貰い火を防ぐことがその目的でした。最初は木造の外壁に銅や鉄の薄板を張る形式だったのですが、やがてコンクリートやモルタルで正面の壁面を仕上げる工法が主流となっていきます。後年になると新築当初から看板建築として建てられる物が増えてきますが、初期の物は旧来の建物を改修して看板建築に改めた物がほとんどでした。 この西大寺五福町の看板建築群も昭和初期の道路拡幅に伴って改修され、現在の姿になりました。 狭い道路の両側に木造2階建ての建物が並びます。幾つかの建物は建て替えられて現代風の家屋に変わってしまっていますが、昭和初期の看板建築群がこれだけのボリュームで並んでいるのは全国にも例がないと言われています。 商店街にさしかかる手前の交差点。この場所から看板建築の建物群の始まりとなります。 最初に見えてくる建物。2面に沿って伸びる大きな建物です。長く区画が連なる景色はヨーロッパのアパートメントを思わせます。 交差点を挟んだ向かい側の建物。水平ラインが強調されたモダニズム風デザインです。 商店街の中心へ向かいます。この辺りから看板建築比率が高まってきます。 飾り柱が特徴の帽子店。 家具店。アールデコ風の逆三角錐の柱が何とも素晴らしい。 現在ゲームソフト店として使われている建物。目立つ建物ではありませんが、軒蛇腹やテラコッタ飾りをしっかり備えています。 向かい側に建つ建物。通りに沿って窓が連なります。 その隣にも個性的な建物が並びます。 当初は耐火建築として考案された看板建築は、実際には旧来の日本家屋に簡易に洋風意匠を施す手法として広まって行きました。しかし、本来が木造建築であるが為に建物の耐用年数も限られ、今日その多くが建て替えを余儀なくされる運命にあります。 歴史的建造物や江戸時代の古い街並みについては各地で保護運動が盛んに行われていますが、看板建築に代表される昭和の街並みの保存や活用の例は極めて少数です。とは言え、映画のロケ地にも使われたこの西大寺の事例もあり、有効な観光資源としての可能性が期待できるのではないでしょうか。
by sunshine-works
| 2009-10-17 23:41
| 近代建築 岡山県
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