2009年 08月 17日
法泉寺本堂
岡山県和気町の近代建築その2

和気町の中部、のどかな景色の中に一軒の寺院が建っています。今から130年前の明治11年に建立されたこの法泉寺本堂は仏教寺院としては珍しい偽洋風建築で建てられた建物です。讃岐の棟梁 大石四郎左衛門により設計・施工されました。
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日本建築の技法で棟梁達が建てた洋風建築を総称して偽洋風建築と呼びますが、この法泉寺本堂は元々が日本建築である寺院に敢えて洋風の意匠を採り入れて建てられました。鎧戸を持つアーチ窓、ギリシア神殿風の三角ペディメントや円柱、軒を飾る洋風の蛇腹(コーニス)等、それまでの仏教寺院の概念を超える斬新な建物です。
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和気町の公式サイトによると、この寺の宗派である日蓮宗不受不施派はキリスト教の影響を受けて僧を牧師、寺を教会と名乗っていたそうです。寺院に洋風の意匠が採り入れられたのもキリスト教の影響と推測されます。
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基本的な構成は従来の寺院建築です。思った程に奇異な印象は無く、特に意識しなければ洋風の意匠に気付かないかも知れません。とは言え、この本堂が建てられた明治初期に於いて、伝統と格式を重んじる仏教寺院が洋風意匠を採り入れる事など想像も付かなかった事と思います。純白の漆喰に映えるコバルトブルーの軒飾りも従来の寺院には無い色使いです。
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今日では現代建築で建てられた近代寺院は数多く見られますが、明治になってまだ間もない時期に地方の小さな農村にこのような先駆的な寺院が建てられた事に驚かされます。
日蓮宗不受不施派は幕府によって長い間禁教とされ、隠れ信仰となっていました。このモダンな本堂は、明治になってようやく禁を解かれた宗派の意気込みを象徴するような建物です。
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by sunshine-works | 2009-08-17 20:54 | 近代建築 岡山県 | Trackback | Comments(2)
Commented by ものぐさ父さん at 2011-12-02 01:02 x
大石四郎左衛門の曾孫です。父方の祖母が娘になるようです。NHKのプロフェッショナルを見ていて、ふと調べてみたところこちらのサイトを見つけました。好意的にご紹介いただき、ありがとうございます。
祖母は、同じく岡山県出身の祖父と結婚し上京したため、曾祖父の作品は小学生の頃に一度見たことがあるのみです。また、訪れてみたいと思います。
Commented by sunshine-works at 2011-12-02 21:33
ものぐさ父さん はじめまして。
地方では洋風建築自体が珍しかった当時、このような建築を実現させた才能に驚きます。ご先祖は棟梁としての優れた技能はもとより、卓越したセンスを備えた方だったのでしょう。
縁ある作品を記事とさせていただいた事、誠にありがとうございました。


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