2009年 04月 07日
旧大同燐寸工場施設
姫路の近代建築その1

近代建築Watch播磨編は今回より姫路を巡ります。
国宝姫路城で知られる姫路は古来より播磨の経済・文化の中心地でした。神戸が開港するまでは現在の兵庫県地域で最も多くの人口を擁する都市として榮え、明治以降も県西部の拠点都市として重要な地位を占めて来ました。
商業都市として、近代工業都市として、さらには軍都として、様々な歴史を今に伝える近代化遺産が数多く残る姫路の建築を紹介していきます。

姫路駅から南西方向、小さな川に沿って煉瓦の建物が並んでいます。この建物はかつて日本が大きなシェアを誇っていたマッチの製造工場として建てられたものです。
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明治以降、富国強兵の名の元に国家主導で重工業の育成が推し進められてきましたが、戦前の日本で国際競争力を持つ工業製品と言えば、繊維製品や日常生活用品といった軽工業製品に限られていました。
この分野に於いて日本は中国・アジア市場で大きなシェアを築き、欧米各国と激しい競争を続けていました。これら海外に輸出された日常品の中でも、とりわけ日本が質・量共に他国を凌駕していた製品として挙げられるのが燐寸、すなわちマッチの製造でした。
気候が乾燥した播州地方はマッチの製造に適し、姫路には多くのマッチ工場が建てられましたが、この建物も当時日本最大のマッチ製造会社となった大同燐寸の工場・倉庫として昭和6年に建てられたものです。
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煉瓦造りの、おそらくは元倉庫だったと思われる建物が川沿いに連なります。アーチ窓に面格子を配した一般的な煉瓦倉庫のスタイルです。この横長の倉庫建物は東側と北側の2面の敷地に沿って配置されています。
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*頭上を横切る桁は昭和40年代に運行していた姫路モノレールの遺構です。
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大正中期、第一次世界大戦の影響を受け輸出が止まった欧州のメーカーに代わって日本のマッチ業界は最盛期を迎えます。しかし、この建物が建てられた昭和6年頃には一転して輸出の停滞期となっていました。その後すぐに大同燐寸は実質的な破綻を迎え、日産財閥系の日産農林工業へ引き継がれていきます。社名は変わりながらも同社のツバメをデザインしたマッチラベルは数あるマッチの中でも有名ブランドとして広く知れ渡っていました。
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一部の窓には木製の窓枠や鉄の面格子が当時のまま残っています。
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幾つかの窓は塞がれていたり、アルミの面格子に変えられています。
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日産農林工業のマッチ工場として昭和22年まで操業を続けたこの工場は、その後山陽色素の姫路第二工場として現在も現役で使われています。

南側に工場の入口があります。構内には大小の煉瓦の建物が確認できます。築年代は特定できませんが幾つかの時代に渡って建てられた物かも知れません。
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主要な輸出産業として日本の経済発展に寄与し、身近な広告媒体としても親しまれたマッチ製造業はライターや自動着火式のガスコンロの普及によって急速に衰退していきます。現在でも兵庫県は全国一のマッチ生産量を誇りますが、往時に比べるとその規模は遥かに小さいものとなっています。姫路周辺に数多く建てられたマッチ工場も戦前の建物で現存するものはここ以外には見当たりません。この建物は一時代を築いた花形産業の盛衰を偲ぶ唯一のものとなっています。
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by sunshine-works | 2009-04-07 21:38 | 近代建築 | Trackback | Comments(4)
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Commented by aruphoto at 2009-04-09 21:41
これは素晴らしいですね。
是非撮ってみたく思います!
ライトアップとかしてもいいくらいの建物ですよね。
Commented by sunshine-works at 2009-04-10 12:43
aruphotoさん コメントありがとうございます。
ここは建物も素晴らしいのですが、ロケーションも最高です。川の対岸からの眺めやモノレールの廃線跡との取り合わせ等、絵になる建物です。是非お訪ねください。
Commented by ワイスカ at 2014-09-10 13:20 x
とても綺麗な建物で、訪れようと地図検索していましたら、無くなっているようでした。
取り壊されグーグルでは駐車場になっております・・・

歴史や文化を伝える貴重な建物が失われていくのはとても残念ですが、改めて写真に収めておくことの大切さを感じましたね。
Commented by sunshine-works at 2014-09-24 12:55
ワイスカさん こんにちは。
この建物は姫路地区の産業近代化遺産としてぜひとも残して欲しかったですね。播州の煉瓦建物が次々と失われていくのはなんとも残念です。


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